更新日:2025.10.31
退職金に税金がかからない方法とは?税金ゼロに近づける戦略
退職金と税金について興味があり、「退職金の税金の仕組みって?」「退職金の税金を少なくする方法とは?」など、お困りではありませんか。
退職金は、勤続年数が長くなればなるほど「退職所得控除」が大きくなる仕組みとなっています。
ただ、退職所得には、退職金の他に、一時金で受け取ったiDeCoや企業年金も含まれる点には注意が必要です。
本記事では、退職金にかかる税金の仕組みや課税方法、退職所得控除について、退職金を「税金ゼロ」に近づける方法などを解説しています。
Contents
退職金にかかる税金の仕組みとは

退職金にはどのような税金がかかるのか?
退職金は、長年の勤務に対する功労金的な性格を持つため、他の所得よりも優遇された税制が設けられています。
退職金は、通常の給与のような「給与所得」ではなく、「退職所得」として課税方式が適用されます。
なお、退職金を年金形式で受け取る場合には「雑所得」になる点には注意しておきましょう。
退職金を一時金として受け取る場合には「分離課税」となり、所得税と住民税が課されますが、通常の給与所得とは分けて計算される点を押さえておきましょう。
退職金を受け取る際には、退職金から「退職所得控除」を差し引いて、半分にした金額が「退職所得」となります。
● 退職所得 = (退職金 - 退職所得控除額) ÷2
退職所得控除額は勤続年数によって決まり、勤続20年以下の場合は「40万円×勤続年数」、20年を超える場合は「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」で計算します。
| 勤続年数 | 退職所得控除 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数 ※最低80万円 |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数−20年) |
たとえば、勤続25年の人なら、「800万円+70万円×5年=1,150万円」が退職所得控除額になります。
この計算では、勤続年数に1年未満の端数がある場合は、1年に切り上げて計算される点もポイントです。
たとえば、勤続24年4ヶ月の場合には、25年として計算します。
勤続年数には、長期の欠勤や病気での休職の期間も含まれ、他社への出向期間はその出向期間を通算して退職金が計算されている場合には含めて計算します。
また、退職が障害者になったことに直接起因する場合は、退職所得控除額に100万円が加算される仕組みです。
なお、同じ年に2つ以上の会社から退職金を受け取った場合には、2つの会社の退職金を合計したうえで、勤続期間が長い方の会社の勤続年数から退職所得控除を計算します(勤続年数に重複していない期間がある場合には、その部分を長い方の勤続期間に加算します)。
このように、退職金は、勤続年数が長い人ほど税金負担を大きく減らせるようになっています。
退職金の課税方法は2パターンある
退職金にかかる税金の計算は、「退職所得の受給に関する報告書」を会社へ提出するかどうかで大きく変わります。
この報告書を提出する場合は、会社が退職金の支給時に正しい税額を源泉徴収し、退職所得控除を適用してくれるため、確定申告は原則不要となります。これにより、正確かつ低い税負担で済むのが通常です。
一方、提出しない場合は、自動的に20.42%の税率で源泉徴収されます。
提出しない場合には、退職所得控除が考慮されないため、本来よりも多く税金を引かれるケースが多くなります。
後から確定申告をして正しい税額を計算すれば還付を受けられますが、手続きが煩雑になりがちです。
| 退職所得の受給に関する報告書 | 退職金の控除 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 提出する場合 | 正しい税額で源泉徴収される | 不要 |
| 提出しない場合 | 退職金の20.42%が源泉徴収される | 必要 |
退職金を受け取る前に会社へ報告書を提出することが、税金を最も少なく抑えるための基本的な戦略といえるでしょう。
税金がかからない・少なくなるケースとは

退職所得控除で税金がゼロになるのはどんなとき?
退職所得控除の計算結果によっては、退職金に税金がまったくかからず非課税となるケースもあります。
具体的には、受け取る退職金の金額が「退職所得控除額」を下回っている場合、課税対象となる退職所得はゼロとなり、結果的に所得税と住民税の負担がなくなる計算です。
たとえば、勤続35年の場合、退職所得控除額は「800万円+70万円×15年=1,850万円」となります。
この人が退職金として1,800万円を受け取ったとすると、課税対象となるのは「(1,800万円-1,850万円)÷2」=-25万円となり、ゼロを下回るため、税金がゼロになります。
退職所得の注意点
退職金にかかる税金を減らすうえで注意したいのが、「退職所得に含まれる収入の範囲」についてです。
会社から支給される一般的な退職金だけでなく、退職手当とみなされる一時金(みなし退職手当)も「退職所得」として扱われます。
具体的には、次のような一時金は「退職手当等」とみなされて、退職所得に含まれます。
● iDeCoや企業型確定拠出年金(企業型DC)、確定給付企業年金(DB)などから老齢給付金として支給される一時金
● 中小企業退職金共済(中退共)から支給される退職金
● 小規模企業共済から支給される一定の共済金や解約手当金
これらの制度で受け取る一時金は、最終的に退職金と合算して課税計算されるため、受取額が多いほど控除額を超えて課税される場合があります。
たとえば、退職金2,000万円の他に、iDeCoで一時金を300万円受け取った場合には、退職収入の合計は2,300万円となり、そこから退職所得控除を引いて退職所得を計算します。
複数の制度から退職時に一時金を受け取る場合には、合計額が退職所得控除を上回らないかを事前に確認することが重要です。
もし退職所得控除を超える場合には、たとえば「iDeCoは年金形式で受け取る」などの調整をすることによって、税負担を軽減できるケースもあります。
退職金を「税金ゼロ」に近づける3つの方法

① 退職金を一時金で受け取るようにする
退職金を「税金ゼロ」に近づける第一のポイントは、一時金として受け取ることです。
「退職金をどう受け取るか」で税負担は大きく変わります。
退職金を年金形式で分割受取にすると、「雑所得」扱いとなり、毎年の所得税や住民税の対象になります。
公的年金の場合には公的年金等控除で税金を少なくできますが、退職金を雑所得として受け取った場合には優遇税制はありません。
退職金が「退職所得控除」で優遇されるのは、一括で受け取った場合のみです。
また、iDeCoや企業型DC、企業年金を受け取る際にも、一時金を選ぶと退職所得扱いとなる点には注意が必要です。
② 勤続年数を調整して退職タイミングを見極める
退職金の税金を減らすうえで見落としがちなのが、勤続年数の区切り方です。
退職所得控除は、勤続年数に応じて増加するため、たった数か月の違いで控除額に最大70万円(勤続年数20年未満の場合は40万円)の違いが生まれます。
退職所得控除は、勤続20年以下は「40万円×勤続年数」、勤続20年超は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」で計算されます。
この際、勤続年数は、1年未満切り上げになる点が重要です。
たとえば、24年11ヶ月で退職すると25年分の控除(1,150万円)しか受けられませんが、あと2ヶ月働けば25年1か月となり26年分の控除(1,220万円)となります。
このように、退職時期を月単位で調整するだけで税金を減らせる可能性があります。
特に、再雇用契約や定年延長が選べる場合には、退職日を1年先延ばしにすることも有効です。
また、iDeCoでも同様の考えにより、拠出年数を増やすことで退職所得控除の額を増やすことができます。
③ 他の所得と重ならない年に退職する
退職金は「分離課税」として扱われるため、原則として給与所得や事業所得とは別枠で課税されます。
ただ、同じ年にボーナスや役員報酬、副業収入などが多い場合、住民税や社会保険料に影響する可能性に注意が必要です。
特に、退職年に高額の給与や賞与を受け取ると、翌年の住民税や健康保険料の算定基準が上がり、実質的な負担増につながるケースがあります。
退職金そのものは分離課税であっても、「他の所得が多い=翌年の税負担が上がる」という構造を忘れてはいけません。
なお、個人住民税は、その年の1月1日現在の住所地において前年の所得に対して課税される「前年所得課税」となっています。
退職所得については「現年分離課税」となり、退職所得控除の生じた年に他の所得と区別して、退職した年の1月1日に住んでいた住所地において課税される仕組みとなっています。
理想的なのは、給与所得が少ない年や、収入が途絶えるタイミングで退職金を受け取ることです。
これにより、所得全体のピークを分散でき、結果的にトータルの税負担を軽減できる可能性があります。
まとめ
退職金は、勤続年数が長くなればなるほど「退職所得控除」が大きくなる仕組みとなっています。
退職所得には、退職金の他に、一時金で受け取ったiDeCoや企業年金も含まれる点には注意が必要です。
Q&A
Q1 退職金の税金の仕組みとは?
A1 退職金は「退職所得」となり、給与所得とは別に課税されます。「退職所得控除」で優遇されており、勤続年数が長くなればなるほど控除額が大きくなります。
Q2 退職金を受け取る際の注意点とは?
A2 退職金は「一時金」で受け取るようにしないと退職所得控除が受けられない(年金形式だと優遇措置のない雑所得になってしまう)点に注意しておきましょう。また、「退職所得の受給に関する報告書」を会社へ提出しておくことで、正確な計算で源泉徴収されて確定申告不要となります。
Q3 退職金を税金ゼロに近づける方法とは?
A3 退職金を一時金で受け取るようにする、勤続年数を調整する、他の所得と重ならない年に退職することなどが挙げられます。









