更新日:2026.1.5
遺言信託とは?費用はどれくらいかかる?
遺言信託について気になっていて、「そもそも遺言信託とは?」「遺言信託の費用はどれくらいかかる?」など、疑問に思っていませんか。
遺言信託は、遺言書の作成から保管、遺言執行に至るまで、信託銀行などが一括してサポートしてくれるサービスで、遺言で揉めたくない場合に活用されます。
ただ、遺言信託は、費用が高額になりやすいため、ある程度の資産がある場合を除くと、誰にでも気軽におすすめできるサービスではありません。
本記事では、遺言信託の概要、遺言信託の注意点やデメリット、実際の遺言信託の費用などについて解説しています。
Contents
遺言信託とは

遺言信託とはどんな制度なのか?
遺言信託とは、遺言書の作成から保管、遺言執行に至るまで、信託銀行や専門機関が一括してサポートしてくれるサービスです。
遺言書は、自分で作成することもできますが、法的に無効となるリスクや、内容の不十分さによって相続人同士のトラブルに発展するケースも少なくありません。
遺言信託では、専門家が本人の意向を確認しながら、法律に基づいた遺言書の作成を支援し、その後の保管や管理まで確実に行います。
また、遺言者が亡くなった後は、遺産の分配や必要な手続きも専門機関が代行するため、遺族が複雑な相続手続きに追われる負担を軽減できます。
こうした総合的なサポートにより、遺族間の争いを防ぎ、遺言者の意向を確実に実現することを目的とした制度です。
そもそも「信託」とは?「投資信託」との違いとは?
そもそも「信託」とは、財産を持つ人(委託者)が、信頼できる専門機関や個人(受託者)に、財産の管理や運用、処分を任せ、特定の受益者のために活用してもらう仕組みのことです。
遺言信託の場合は、遺言を残す本人が「委託者」となり、信託銀行などが「受託者」となり、遺産を分配する家族が「受益者」となります。
信託のポイントは、財産を託すことで、専門的な管理や法的な枠組みの中で目的に沿った運用ができる点にあります。
なお、新NISAやiDeCoなどで投資できる「投資信託」とは全く別の概念であり、こちらは投資家から集めた資金を運用し、その成果を分配する金融商品です。
一方、信託は、財産管理そのものを委託する制度であり、遺言信託のように資産承継の場面でも活用されます。
信託には、「遺言信託」の他にも次のような商品があります。
● 暦年贈与信託
● 遺言代用信託
● 後見制度支援信託
● 特定寄附信託
● 特定贈与信託(特定障害者扶養信託)
● 生命保険信託
● 教育資金贈与信託
● 結婚子育て支援信託
再三になりますが、信託と投資信託は全く別の概念であり、利用目的も完全に異なるため、混同しないようにしておきましょう。
| 項目 | 信託 | 投資信託 |
|---|---|---|
| 目的 | 財産の管理や運用、処分を委託者の意向に沿って行うための仕組み | 多くの投資家から集めた資金をまとめて運用し、収益を分配する金融商品 |
| 主な利用場面 | 相続対策、財産管理、遺言信託、家族信託など | 資産運用 |
| 財産の扱い | 委託者の財産を受託者が管理·運用する | 投資家の資金をまとめてファンドマネージャーが運用する |
| 運用リスク | 基本的に受益者が負うが、目的は利益追求ではない | 投資家が市場リスクを負う |
| 代表例 | 遺言信託、家族信託、金銭信託など | インデックスファンド、アクティブファンドなど |
利用する注意点

遺言信託を使うデメリットや注意点は?
遺言信託のデメリットとしては、手数料が高めに設定されている点が挙げられます。
遺言書作成時の手数料に加え、執行時にも別途費用が発生するため、遺産額が大きくないケースでは割高に感じられることが少なくありません。
また、遺言内容を変更したい場合にも、追加の手続きや費用が必要になることが多く、柔軟性に欠けることがあります。
さらに、信託銀行など第三者が介在するため、担当者とのコミュニケーションや方針の確認を丁寧に行う必要があり、「何をどこまで任せるか」を事前に明確にしておくことが重要です。
「遺言代用信託」と混同しないようにしよう
銀行などが提供している信託商品として、「遺言代用信託」があります。
「遺言信託」と「遺言代用信託」は名前が似ているだけで、目的も仕組みも異なるため、混同しないよう注意が必要です。
遺言代用信託とは、委託者の生存中は自分自身が利益を受け取り、死亡後は指定した受取人へ財産が引き継がれる仕組みの信託商品です。
遺言代用信託は、遺言書を作らなくても財産承継をスムーズに行える点が特徴で、遺言執行とは別のメカニズムで動きます。
一方、遺言信託は、あくまで遺言書の作成や保管、執行をサポートするサービスであり、財産の管理方法そのものを商品化したものではありません。
| 項目 | 遺言信託 | 遺言代用信託 |
|---|---|---|
| 概要 | 遺言書の作成や保管、執行を専門機関がサポートするサービス | 生前は本人が利益を受け取り、死亡後に指定受取人へ財産を承継できる信託商品 |
| 目的 | 遺言の適切な管理や執行によるトラブル防止 | 遺産分割手続きなしでスムーズに財産を承継 |
| 費用負担 | 作成·管理·執行に手数料が必要 | 信託商品の管理手数料などが発生 |
| 柔軟性 | 内容変更には手続きや費用が必要 | 契約内容に基づき自動的に承継されるため変更は限定的 |
| 適している人 | 相続トラブルを避け、確実に遺言を実行したい人 | 遺言の手続き簡略化を重視し、生前から財産移転の準備を進めたい人 |
どのような人が遺言信託を活用すべきか

利用に向いているのはどんなケース?
遺言信託が向いているのは、家族構成が複雑であったり、相続におけるトラブルの芽を事前に取り除きたい人です。
たとえば、子ども同士の仲が良くない、再婚家庭で前妻(夫)との子どもがいる、相続人が多数いるといったケースでは、遺産の分配方法を巡って争いが生じやすく、専門機関による中立的かつ確実な遺言執行が大きな意味を持ちます。
また、事業承継や不動産、賃貸物件など分割が難しい資産を所有している人にも適しています。
遺言信託を利用することで、どの資産を誰に引き継ぐかを明確にし、実際の執行まで専門家に任せられるため、遺族の負担を軽減可能です。
自分の意思を確実に反映させたい、相続に関わる不安をなくしたいと考える人にとって、遺言信託は心強い選択肢となります。
遺言信託の手続きの流れ

どのように始め、何を準備するのか?
遺言信託を利用する場合、まず信託銀行や専門機関に相談するところから始まります。
はじめは、資産の内容や家族構成、相続に対する希望や不安を共有し、最適な遺言内容を一緒に検討する段階です。
次に、担当者とともに遺言書のドラフトを作成し、財産の分配方法や相続人ごとの割合などを整理します。
ここでは、戸籍謄本や不動産の権利書、預貯金の残高証明など、資産内容を裏付ける資料を準備することになります。
ドラフトがまとまったら、公証役場にて公証人の立会いのもと「公正証書遺言」として正式に作成する場合が一般的です。
公正証書にすることで、法的トラブルのリスクが減り、死後の執行がスムーズになります。
最後に、信託銀行が遺言書を保管し、本人の死後に遺言内容を実際に執行する流れとなります。
費用の目安は?

遺言信託にはどれくらいの費用がかかる?
遺言信託の費用について、三井住友信託銀行の実際のケースで見てみましょう。
三井住友信託銀行の遺言信託には、「執行コース」と「保管コース」があります。
「執行コース」には「プランI」と「プランII」があり、手数料は次のようになっています。
| 三井住友信託銀行の遺言信託(執行コース) | プランI | プランII |
|---|---|---|
| 概要 | 基本手数料を抑えた手数料プラン | 支払総額を抑えた手数料プラン |
| 基本手数料 | 330,000円 ※別途、公正証書作成費用、戸籍謄本等取り寄せに関する費用が必要 |
880,000円 ※別途、公正証書作成費用、戸籍謄本等取り寄せに関する費用が必要 |
| 遺言書保管料 | 年間6,600円 | 無料 |
| 遺言信託変更手数料 | 55,000円 | 55,000円 |
| 遺言執行報酬 | 最低1,100,000円 | 最低330,000円 |
申込時に遺言書を作成するための「基本手数料」が発生し、さらに別途、公正証書作成費用、戸籍謄本等取り寄せに関する費用が必要です。
「遺言書保管料」が継続して発生し、遺言内容を変更する際には「遺言信託変更手数料」が発生します。
遺言執行時には、相続や遺贈財産に係る相続財産評価額に応じて「遺言執行報酬」が発生し、その額は小さくありません。
さらに、遺言執行時に必要となる次の費用も別途負担する必要があります。
● 不動産登記に関する登録免許税や司法書士手数料
● 戸籍謄本、固定資産税評価証明書等取り寄せ費用
● 預貯金等残高証明書等発行手数料
● 鑑定評価手数料
● 不動産売却手数料
総額で見ると、最低200万円以上は必要になると見積もっておくことが現実的な試算です。
まとめ
遺言信託は、遺産額が多い家族などが、相続で揉めたくない場合に使えるサービスです。
ただ、遺言信託の費用だけでも200万円程度は見積もっておく必要があり、さらに公正証書作成費用や遺言執行時の費用などが別途で発生します。
遺言信託に掛かる費用が、財産総額の数%以内に収まるほど財産が多い家庭にはおすすめできますが、万人におすすめできるサービスとは言えません。
Q&A
Q1 遺言信託とは?
A1 遺言書の作成から保管、実際の遺言執行に至るまで、信託銀行や専門機関が一括してサポートしてくれるサービスです。遺言時の遺族間の争いを防ぎ、遺言者の意向を確実に実現することを目的としています。
Q2 遺言信託の費用はどれくらいかかる?
A2 遺言信託の費用だけでも200万円程度は見積もっておいた方が賢明です。さらに、公正証書作成費用や遺言執行時の費用などが別途で発生します。
Q3 遺言信託は投資信託とはどう違う?
A3 同じ「信託」とつくものの、「信託」と「投資信託」はまったく別の商品です。遺言信託などの「信託」は、財産の管理や運用、処分を委託者の意向に沿って行うための商品となっています。




