更新日:2026.3.5
個人事業主の年金とは?追加対策したほうがいい?
個人事業主の年金について気になっていて、「個人事業主の年金とは?」「個人事業主の年金対策は必要?」など、不安に思っていませんか。
個人事業主の年金は国民年金だけで少なくなる傾向があるため、老後に向けた対策は必須です。
具体的には、国民年金基金や付加年金で年金額を増やす、iDeCoで節税効果を受けながら資産運用する、生涯現役で働きながら年金は繰下げ受給で増やすといった対策が有効です。
本記事では、個人事業主の年金受給額について取り上げた上で、個人事業主の年金対策として「国民年金基金」「付加年金」「小規模企業共済」「iDeCo」について解説しています。
Contents
公的年金制度における個人事業主の立ち位置

厚生年金と比べて何が違うのか?
自営業者やフリーランスなどの個人事業主が加入するのは、原則として「国民年金(基礎年金)」のみです。
一方、会社員や公務員は、国民年金に加えて厚生年金にも加入する「2階建て構造」となっており、老後に受け取れる年金額に大きな差が生まれます。
厚生年金は、報酬比例で上乗せ給付があるのに対し、国民年金は定額給付が基本です。
| 項目 | 個人事業主 | 会社員・公務員 |
|---|---|---|
| 加入制度 | 国民年金のみ | 国民年金+厚生年金 |
| 保険料 | 定額 | 給与比例(会社と折半) |
| 将来の受給額 | 基礎年金中心で比較的少なめ | 基礎年金+報酬比例部分で多くなりやすい |
| 企業年金 | 原則なし | 企業型DCなどがある場合も |
個人事業主は、自助努力による備えがより重要になります。
将来設計に必要な追加対策

なぜ自分で備える必要があるのか?
会社員や公務員は、厚生年金という上乗せ部分があるため、老後の年金額は比較的手厚くなります。
しかし、個人事業主は1階部分である国民年金のみのため、満額でも老後生活費を十分に賄えない可能性があります。
さらに、平均寿命の上昇や物価上昇(インフレ)によって、将来必要となる生活資金は増える傾向です。
公的年金だけに依存するのではなく、国民年金基金やiDeCoなどを活用して、自ら「上乗せ部分」を構築する視点が不可欠です。
個人事業主の実際の年金受給額は?
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、年金受給額の統計を見てみましょう。
| 平均受給額 | 国民年金 | 厚生年金 |
|---|---|---|
| 令和4年度 | 56,428円 | 144,982円 |
| 令和5年度 | 57,700円 | 147,360円 |
| 令和6年度 | 59,431円 | 151,142円 |
※国民年金:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」21ページより
※厚生年金:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」8ページより
上記のとおり、令和6年度の平均受給額は、国民年金が月額59,431円、厚生年金が月額151,142円と、約9万円以上の差があります。
年額に換算すると、国民年金は約71万円、厚生年金は約181万円となり、その差は年間で約110万円にも及びます。
これは、会社員が基礎年金に加えて報酬比例の厚生年金を受け取れる「2階建て構造」であるのに対し、個人事業主は原則として基礎年金のみであることが大きな要因です。
また、直近3年間でいずれも受給額は増加傾向にありますが、物価上昇を考慮すると実質的な購買力が大きく改善しているとは言い切れません。
特に、家賃や食費、光熱費などの生活コストが上昇している現在、月6万円前後の年金だけで生活を成り立たせるのは現実的に難しいケースも多いでしょう。
このデータは、個人事業主にとって「公的年金だけでは不足する可能性が高い」という現実を示していると言えます。
個人事業主が使える年金系制度とは

国民年金基金とはどういうもの?
国民年金基金は、個人事業主である第1号被保険者が任意で加入できる公的な上乗せ年金制度です。
国民年金だけでは不足しがちな老後資金を補う目的で設けられており、将来受け取る年金額をあらかじめ設計できるのが特徴です。
掛金は選択する給付型や口数によって決まり、支払った全額が社会保険料控除の対象となるため、所得税および住民税の節税効果も期待できます。
また、4月から3月までの1年分の掛金を前納すると、0.1ヵ月分の掛金が割引されます。
終身年金型を選べば一生涯受け取れる安心感もあり、安定的な老後収入を確保したい人に適した制度です。
なお、1口目は、終身年金(「A型:15年保証」と「B型:保証期間なし」から選択)となっており、この中に「付加年金」が含まれています。
そのため、国民年金基金に加入した場合には、後述する「付加年金」を納付できなくなる点には注意しておきましょう。
国民年金が増える「付加年金」とは?
付加年金は、国民年金に月額400円を上乗せして納めることで、将来の老齢基礎年金に「200円×納付月数」が加算される制度です。
例えば10年間(120か月)納めた場合、年間24,000円が老後年金に上乗せされます。
年金受給2年間で元を取れるため、コストパフォーマンスに優れた制度といわれます。
ただ、前述のように、国民年金基金との併用はできません。
節税しながら老後資金をつくる方法

小規模企業共済の特徴とは?
小規模企業共済は、個人事業主や小規模法人の経営者が、廃業や引退時の「退職金代わり」に備えるための公的制度です。
毎月1,000円〜7万円の範囲で掛金を自由に設定でき、増額もしくは減額も可能と柔軟性があります。
最大のメリットは、支払った掛金が全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になる点です。
所得税と住民税の負担を抑えながら、将来のまとまった資金を準備できます。
受取時も、退職所得扱いまたは公的年金等控除の対象となり、税制面で優遇されています。
ただ、掛金納付月数が20年(240月)未満で任意解約した場合には、受け取れる共済金が掛金合計額を下回る点には注意が必要です。
iDeCoとは?
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を拠出し、自分で運用商品を選ぶ私的年金制度です。
個人事業主の場合、月額最大68,000円まで拠出でき、その全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象となります。
さらに、運用益は非課税、受取時は年金として受給する場合には「公的年金等控除」、一時金として受給する場合には「退職所得控除」の対象となる税制優遇があります。
拠出·運用·受取の3点で税制優遇がある三重のメリットが特徴です。
運用商品は、投資信託や定期預金などから選択でき、近年は米国株式インデックスや全世界株式インデックス(通称「オルカン」)が人気を集めています。
長期·積立·分散を活用しながら、節税と資産形成を同時に実現できる制度として、個人事業主の資産形成においては、新NISAと並んで最有力の手段となっています。
安心できる老後のために考えるべきこと

年金制度の弱点をどう補うべきか?
個人事業主は、老後の生活費を年金だけでまかなうのは難しいケースが多いため、早い段階からの資産形成が不可欠です。
国民年金基金や付加年金、小規模企業共済、iDeCoといった公的制度を活用しつつ、民間保険や長期投資を組み合わせることで、収入源を複数持つ体制を整えることが重要です。
国民年金基金、付加年金、小規模企業共済、iDeCoについてまとめると、次の表のようになります。
| 制度名 | 目的 | 掛金 | 税制メリット | 受取方法・特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 国民年金基金 | 国民年金への上乗せ年金 | 加入時に給付型·口数を選択 | 全額が社会保険料控除 | 原則終身年金、将来の受給額を設計できる |
| 付加年金 | 少額で基礎年金を増額 | 月額400円 | 全額が社会保険料控除 | 「200円×納付月数」が年金に上乗せ、国民年金基金と併用不可 |
| 小規模企業共済 | 廃業·引退時の退職金準備 | 月1,000円〜7万円 | 全額が所得控除 | 一括·分割受取可、退職所得扱いで税優遇あり |
| iDeCo | 自分で運用する私的年金 | 個人事業主は月最大68,000円 | 掛金全額所得控除+運用益非課税 | 投資信託等で運用、受取時も税制優遇あり |
目的別にまとめると、次のようになります。
● 安定重視なら「国民年金基金」
● 少額で効率的に増やすなら「付加年金」
● 退職金づくり+節税なら「小規模企業共済」
● 運用益も狙いながら節税なら「iDeCo」
それぞれ目的やリスク特性が異なるため、老後資金を「分散」して準備する視点が重要です。
生涯現役+年金の繰下げ受給が最も合理的
老後の選択肢として有力なのが、「生涯現役で働きながら年金を繰下げ受給する」というライフプランです。
公的年金は受給開始を遅らせることで受給額が増額されるため、長生きするほど有利になる仕組みです。
具体的には、70歳まで繰下げ受給した場合には+42%、75歳まで繰下げ受給した場合には+84%となります。
75歳は厳しいとしても、70歳前後まで繰下げ受給することで、年金受給額を大きく増やせます。
事業を継続できる個人事業主にとっては、収入を得ながら年金額を増やせる合理的な戦略といえるでしょう。
ただ、繰下げによる年金の増額は、社会保険料や税金との兼ね合いで手取り額が変わる可能性があります。
より詳しくは、FPなどの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
個人事業主の年金は国民年金だけになるため、老後対策は必須です。
特に有力な方法としては、「iDeCo」で米国株インデックスやオルカンに拠出して節税しながら資産運用し、生涯現役で働きながら年金は繰下げ受給して増やすといったものです。
また、余裕がある場合には、国民年金基金や付加年金に加入して将来の年金額を増やすことも有効な手段となります。
Q&A
Q1 個人事業主の年金受給額はいくら?
A1 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金だけの場合には月額59,431円となっています。
Q2 個人事業主が年金額を増やす方法とは?
A2 「国民年金基金」と「付加年金」があります。「iDeCo」を活用して、節税対策しながら資産運用する方法も有効です。また、「年金を繰下げ受給」すれば、年金額を増やせます。
Q3 個人事業主の老後対策とは?
A3 「生涯現役で働きながら年金を繰下げ受給」するライフプランが有効です。ただ、年金の繰下げ受給は、社会保険料や税金との兼ね合いで手取り額が変わる可能性があるため、詳しくはFPなどの専門家に相談してみることをおすすめします。




