更新日:2025.6.19
就業不能保険の必要性とは?デメリットと適した人は?

就業不能保険について検討しているものの、「就業不能保険って本当に必要?」「就業不能保険に適した人って?」など、疑問に思う方も少なくないかもしれません。
就業不能保険は、病気やケガで長期間働けなくなった場合に、収入の減少を補償する保険です。
就業不能保険は、自営業や高リスク職種の方に適する保険ですが、保険料が高額になりやすく、就業不能判定が厳しい点などに注意が必要です。
本記事では、就業不能保険の仕組みや補償内容、就業不能保険のデメリット、働き方別の就業不能保険の必要性について解説していきます。
Contents
就業不能保険とは
就業不能保険とは何か?仕組みと補償内容
就業不能保険とは、病気やケガによって長期間働けなくなった場合に、収入の減少を補償する保険です。
働けない状態が一定期間続いたとき、所定の条件を満たせば毎月の給付金が支払われ、生活費や住宅ローンなどの支出をカバー可能です。
近年は、うつ病などの精神疾患による就業不能についても補償されるタイプの保険も登場してきています。
就業不能保険は、医療保険や生命保険とは異なる補償領域を担っています。
医療保険は入院費や手術費をカバーするのに対し、就業不能保険は「病気で働けなくなったことによる収入減」を対象に、収入を確保する点が特徴です。
生命保険は死亡時や高度障害となった際に遺族に給付されるのに対し、就業不能保険は生存中の就業困難時に備える保険です。
就業不能保険 | 医療保険 | 生命保険 | |
---|---|---|---|
目的 | 働けなくなったときの収入補償 | 医療費の補填 | 死亡時の遺族保障 |
支給タイミング | 働けず収入が減少したとき | 入院・手術などの医療行為を受けたとき | 被保険者が死亡したとき |
支給されるお金の内容 | 月額給付金 | 入院給付金、手術一時金など | 一時金または年金形式 |
対象となる事態 | 病気やケガで長期的に就業できない場合 | 病気やケガによる通院・入院・手術 | 病気・事故・災害による死亡・高度障害 |
主な利用対象 | 自営業・フリーランス・会社員全般 | 医療費を払える備えが少ない人 | 家族がいる人 |
特に、働けなくなった場合の補償がない自営業やフリーランスの方にとって、就業不能保険は注目されています。
サラリーマンであっても、労災や傷病手当金だけでは生活が立ち行かなくなる場合もあるため、リスク対策として就業不能保険は選択肢に入ってきます。
就業不能保険のデメリット
就業不能保険のデメリットとして理解しておくべき点は?
就業不能保険のデメリットについて、実際の就業不能保険をもとに見ていきましょう。
就業不能保険は、保障が長期に及ぶケースが多いため、保険料も高額になりやすく、若く健康なうちに契約しないと割高になる可能性があります。
ライフネット生命の「就業不能保険」の保険料は、次の条件で、30歳男性は月額1,807円、30歳女性は月額1,576円となっています。
● 就業不能給付金月額:10万円
● 支払対象外期間:180日
● 給付金の受け取り方:標準タイプ
● 保険期間・保険料払込期間:65歳まで
● 復帰支援一時金:なし
月額保険料だけ見ると、生命保険の半額程度のため「安い」と思うかもしれません。
しかし、就業不能保険で給付金を受け取るためには、「働けない」と認定されるための条件は厳格です。
上記のライフネット生命の場合は、「就業不能給付金のお支払いについて」は次のようになっています。
● 元のお仕事(現職)に復帰できないときを対象にした給付金ではありません。
● 約款所定の就業不能状態となり、その状態が支払対象外期間をこえて継続したと医師によって診断されることを要します。
● うつ病等の精神障害が原因の場合や、むちうち症や腰痛等、医学的他覚所見がない場合はお支払いできません。
単に診断書があるだけでは足りず、一定期間以上の就業不能状態であることが求められます。
部分的に働ける場合は給付対象外となるケースもあり、期待していた支援が受けられない場合もあります。
精神疾患への保障には免責期間の延長や給付制限が設けられている場合も多く、うつ病などでの休職には対応しきれないことも少なくありません。
給付期間も一定期間で終了するため、長期の収入補償には限界があるということが現実です。
働き方別の就業不能保険
会社員にとって就業不能保険はどの程度重要なのか?
会社員の場合、病気やケガで働けなくなった際には、健康保険から傷病手当金として、給与の約3分の2に相当する額が、最長1年6ヶ月支給されます。
さらに、有給休暇の取得や企業の福利厚生制度により、収入減のリスクをある程度カバー可能です。
ただ、それでも収入の全額が補償されるわけではなく、住宅ローンや教育費などの固定支出に対しては不足する可能性があります。
また、企業によって福利厚生の充実度には差があり、特に中小企業では十分な支援が受けられないケースもあります。
サラリーマンが就業不能保険に加入する際には、公的制度や企業保障を補完する形が目的と認識しておくようにしましょう。
パートタイマーが就業不能保険を検討する際のポイントは?
パートタイマーの場合、勤務時間や収入が一定基準を満たさなければ、社会保険に加入できないことも多く、傷病手当金や有給休暇の適用外となるケースが少なくありません。
特に、短時間勤務やダブルワークのパートタイマーは、公的な収入保障が不十分で、就業不能時に収入がゼロになるリスクがあります。
こうした現実を踏まえると、パートタイマーは最低限の収入を維持する手段として、就業不能保険に入るメリットはあります。
ただ、保障内容が過剰になると、保険料負担が家計を圧迫しかねないため、自分の収入と生活費に見合った保障額を設定することが重要です。
短期的な入院や就業不能には貯蓄や他の医療保険などで備え、中長期の働けないリスクに対して就業不能保険を補助的に使うなど、複数のリスクヘッジを組み合わせることが現実的な対応策となります。
自営業・フリーランスにとって就業不能保険の意義とは?
自営業者やフリーランスは、働けなくなったときに傷病手当金などの公的保障が存在しないため、収入が途絶えるリスクが高くなります。
仕事を休めば顧客を失ったり、事業の継続そのものが困難になるケースもあります。
そのため、就業不能保険は、自営業・フリーランスにとってこそ最も必要な保険と言えるでしょう。
特に、一人で業務をこなす個人事業主の場合、数ヶ月単位の療養が命取りとなる可能性もあり、生活費や事業経費を補う収入源の確保は死活問題です。
就業不能保険に加入することで、一定額の生活資金を安定的に確保でき、焦って無理に復帰することによる二次健康被害を防ぐ効果もあります。
保険加入時には、「どの程度働けなくなったら給付対象になるか」という基準と、給付期間の長さをしっかり確認しておく必要があります。
なお、自営業・フリーランスなどの個人事業主が、就業不能保険から保険金を受け取った場合には、その収入額は非課税ではなく、事業収入に算入する必要があるため注意しておきましょう。
つまり、自営業・フリーランスが受け取った就業不能保険からの保険金は、所得税の課税対象となります。
就業不能保険の選択肢
共済の就業不能保障と民間保険の違いは?
就業不能に備える手段として、共済にも一定の保障が用意されています。
例えば、JA共済「働くわたしのささエール」は、病気やケガで働けなくなった際のリスクに備える保険です。
JA共済「働くわたしのささエール」では、一時的な支出に備えられる「一時金型」、収入の減少や支出の増加に備えられる「定期年金型」の2つのプランから選べます。
30歳男性で保険料をシミュレーションしてみると、次のようになっています。
30歳男性 | 一時金型 | 定期年金型 |
---|---|---|
共済金額 | 300万円 | 120万円 |
月額保険料 | 843円 | 4,864円 |
定期年金型は生命保険と同程度の保険料額となりますが、一時金型は安価です。
費用対効果という観点では、最低限の保障を低価格で得たい人は共済、手厚く柔軟な補償を希望する人は民間の就業不能保険がおすすめとなります。
就業不能保険の実践的な活用法
就業不能保険で失敗しないための契約時の注意点
就業不能保険を契約する際には、保障の手厚さや月額保険料だけではなく、加入条件や契約内容の詳細をしっかり確認するようにしましょう。
保障開始時期や給付期間、精神疾患への対応など、自分自身に必要な要素を見極めて契約内容を設計することが、就業不能保険を有効に活用するために必要です。
職業や年収によって保険料や審査の基準が変わるため、自営業や高リスク職種の方は、加入そのものが難しくなるケースもあります。
さらに、健康状態によっては特定の病気が保障対象外となることもあり、契約前の告知義務にも注意が必要です。
また、就業不能保険には多くの場合、「免責期間」が設けられており、たとえば60日間の免責期間中は給付が出ない設計が一般的です。
就業不能保険は、短期でケガや病気が回復するケースではなく、中長期的な働けないリスクに備える保険として設計されている点を理解しておきましょう。
また、契約前に複数社を比較・検討し、必要以上の保険料負担にならないように調整することも重要です。
まとめ
就業不能保険は、特に自営業やフリーランスといった収入が途絶えてしまうリスクが高い方に必要性が高い保険です。
ただ、就業不能保険の保険料は安くはなく、就業不能判定が厳しい点に注意が必要です。
結局の所、就業不能時の最大のリスクヘッジは、十分な貯蓄があることである点を踏まえた上で、就業不能保険について検討してみるようにしてください。
Q&A
Q1 就業不能保険のデメリットは?
A1 長期的には保険料が高額となりやすく、就業不能判定が厳しい。生命保険の方が合理的となるケースも多い。
Q2 就業不能保険が向いている人は?
A2 保障が弱い自営業やフリーランスには向いていると言えるが、保険料が高額な点に注意が必要。会社員にとっては必要性は低い。
Q3 就業不能保険の代替は?
A3 JA共済などの共済も、民間に比べて安価な就業不能保険のような商品を提供している。ただ、最終的には、就業不能時における最大の備えは、十分な貯蓄を作っておくこと。