更新日:2025.6.19
地震保険は本当に必要?補償内容から保険料まで

地震保険の加入を迷っていて、「地震保険って本当に必要?」「地震保険の補償内容や保険料って?」など、お困りではありませんか。
地震保険は、地震・津波・噴火による被害を補償する保険で、火災保険ではカバーできないリスクに備える保険です。
地震保険の保険料は、建物構造と都道府県で自動的に決定される仕組みとなっていますが、割引制度の活用や一括払いで安くできます。
本記事では、地震保険の仕組みや特徴、火災保険との関係や補償内容、地震保険の保険料や割引制度について解説しています。
Contents
地震保険とは
地震保険とは何か?仕組みと特徴
地震保険は、地震・津波・噴火による損害を対象とし、建物や家財に発生した火災・倒壊・埋没・流出などの損害をカバーする保険です。
地震保険は単体で契約することはできず、火災保険の付帯契約としてのみ加入できます。
通常、火災保険の契約時には地震保険もセットで付けるかどうかの選択を求められ、加入しない場合には、加入しない旨の意思表示をする必要があります。
契約当初に地震保険を付けなかったとしても、火災保険の契約期間中に途中追加することも可能です。
地震保険は、万一の大規模災害にも対応できるよう、民間保険会社と政府が共同で運営しており、保険金の支払い能力が確保されています。
南海トラフ巨大地震や首都直下型地震のような、甚大な被害が予想される災害が起こった場合には、国が再保険という形で一部を引き受ける仕組みになっています。
補償額については、地震保険は火災保険の金額に対して30〜50%程度までが上限となっており、建物は最大5,000万円、家財については1,000万円が限度です。
損害の大きさによって、「全損・大半損・小半損・一部損」といった4区分に応じて、定額で保険金が支払われる形式になっています。
契約期間は1年ごとの自動更新か、火災保険に合わせて2〜5年での契約も可能です。
地震保険と火災保険の関係
火災保険と地震保険の補償内容の違いと使い分け
火災保険と地震保険は、補償の範囲が明確に異なります。
火災保険は、火災・落雷・台風・漏水などによって生じた建物や家財の損害を補償しますが、地震・津波・噴火に起因する被害は対象外です。
その理由として、地震関連の被害は被災件数が膨大になりやすく、保険会社だけでリスクを引き受けることが難しいためとされています。
なお、火災保険に「地震火災費用特約」を付けることで、一定の補償を受けることができます。これは、地震などを原因とした火災で建物が半焼以上、または家財が全焼した際に、火災保険金額の5%(上限300万円)まで補償される特約です。
一方で地震保険は、地震・津波・噴火が直接の原因となった損害について、建物と家財を補償するという点で、火災保険とは補完的な関係にあります。
「地震による被害には地震保険」「地震以外の災害には火災保険」という役割分担を意識するようにしましょう。
将来の大規模災害に備えるためにも、両方の保険にセットで加入しておくことが、住宅を守るための基本的なリスク管理となります。
火災保険 | 地震保険 | |
---|---|---|
補償対象 | 火災・落雷・風災・水濡れなど | 地震・津波・噴火による損害 |
地震火災の補償 | △(地震火災費用特約で一部補償) | ○ |
単独加入 | ○ | ×(火災保険とセットでのみ加入可) |
保険金支払い | 実損払い(再建費用など) | 損害区分による定額支払い |
保険料負担 | 補償内容により変動 | 都道府県や建物の構造によって変動 |
運営主体 | 民間保険会社 | 国と民間の共同運営 |
地震保険の補償内容と限界
地震保険の補償内容で理解しておくべき重要ポイントは?
地震保険で支払われる保険金は、4段階の損害に応じた損害区分により決まり、保険金額に対する割合によって、以下のようになっています。
損害区分 | 全損 | 大半損 | 小半損 | 一部損 |
---|---|---|---|---|
支払額(保険金額の割合) | 100% | 60% | 30% | 5% |
地震保険の支払額は、契約している火災保険金額の最大50%までとされているため、たとえ建物が全壊した場合でも、火災保険の満額と同額は受け取れるようにはできません。
全損・大半損・小半損・一部損の区分は、損害の程度によって次のようになっています。
損害区分 | 全損 | 大半損 | 小半損 | 一部損 |
---|---|---|---|---|
建物(主要構造部) | 建物の時価50%以上 | 建物の時価40%以上50%未満 | 建物の時価20%以上40%未満 | 建物の時価3%以上20%未満 |
焼失・流失した床面積 | 延床面積の70%以上 | 延床面積の50%以上70%未満 | 延床面積の20%以上50%未満 | – |
家財 | 時価の80%以上 | 時価の60%以上80%未満 | 時価の30%以上60%未満 | 時価の10%以上30%未満 |
なお、地震等を原因とする地盤液状化によって、住宅が傾いたり沈下した場合にも、保険金が支払われます。具体的には、最大沈下量が30cmを超える場合に全損認定されます。
地震保険では、損害判定が厳格に定められているため、たとえ見た目に大きな被害があっても「一部損」と判定され、十分な補償が受けられないケースがある点に注意が必要です。
地震保険の補償は、「生活再建の一助」という位置づけであり、「完全な建て直し資金」ではない点を理解しておくようにしましょう。
地震保険でカバーされない損害とその対策
地震保険には補償範囲の限界があり、すべての損害をカバーできるわけではありません。
建物や家財が地震で損壊した場合でも、その補償額には上限があり、実際の修繕費や再建費用に届かないケースも多く見られます。
さらに、地震保険では、自動車や1個30万円を超える貴金属・宝石等は家財の対象とならず、火災保険のように明記物件契約もありません。
保険の対象となる紛失や盗難は補償されないため、地震発生時に火事場泥棒の被害を受けた場合も補償されません。
さらに、生活再建のために必要となる仮住まいや生活費、ローンの返済なども、地震保険ではカバーされない点に注意が必要です。
このようなリスクに備えるためには、ある程度の貯蓄を備えておくとともに、共済や所得補償保険を活用するなどの対策があります。
また、災害時の公的支援制度や被災者生活再建支援金など、地震発生時の行政対応についても理解しておくことで、万一の備えがより万全になります。
地震保険の料金体系
地震保険の料金はどのように決まるのか?
地震保険の保険料は、建物の構造(イ構造とロ構造の2区分)と都道府県による3区分(1等地〜3等地)によって決まります。なお、保険会社による保険料の違いはありません。
都道府県による3区分は、地震リスクが低い1等地が最も安く、首都直下巨大地震や南海トラフ巨大地震のリスクがある関東地方や東海地方の3等地が最も高くなっています。
1等地 | 2等地 | 3等地 | |
---|---|---|---|
保険料 | 安い | 普通 | 高い |
都道府県 | 北海道、青森県、岩手県、秋田県、山形県、栃木県、群馬県、新潟県、富山県、石川県、福井県、長野県、岐阜県、滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、鹿児島県 | 福島県、宮城県、山梨県、愛知県、三重県、大阪府、和歌山県、香川県、愛媛県、宮崎県、沖縄県 | 茨城県、徳島県、高知県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県 |
地震保険料の軽減措置として、4つの割引制度があります。
建築年割引 | 耐震等級割引 | 免震建築物割引 | 耐震診断割引 | |
---|---|---|---|---|
割引率 | 10% | 耐震等級1:10% 耐震等級2:30% 耐震等級3:50% |
50% | 10% |
割引率の適用は重複できず、「耐震等級割引(耐震等級3)」「免震建築物割引」の50%が最大です。
また、地震保険を2年〜5年の長期契約し、保険料を一括払いした場合には所定の割引率が適用されます。
地震保険の保険料は、建物構造と都道府県で機械的に決定されますが、割引制度と長期保険料の一括払いを適用することで安くできます。
なお、自宅建物について地震保険料として支払った保険料は、「地震保険料控除」が適用となり、所得税からは保険料の全額(最大5万円)、住民税からは支払保険料の50%(最大2万5,000円)を控除可能です。
賃貸住宅と地震保険
賃貸住宅に住む場合、地震保険は必要なのか?
賃貸住宅では、オーナーが保険を掛けるため、入居者が建物の損害を補償するために地震保険に加入する必要はありません。
ただ、家財に対する補償については、考えておく必要があります。
地震保険の家財は、生活用家財が対象となり、自動車や30万円を超える貴金属などは含まれず、最大1,000万円までしか補償されないため、家財へのリスク補償としては弱いと言わざるを得ません。
家財への補償については、家財保険の地震特約に加入しておけば、災害後の生活再建に役立つ補償を受けられます。
地震によって発生した火災が原因で他の入居者や建物に損害を与えた場合、入居者が損害賠償責任を問われるケースもありますが、失火責任法によって軽過失なら隣家への賠償責任は免除されます。
いずれにしても、賃貸住宅に住む場合には、地震保険に加入する必要性は高くないと言えるでしょう。
まとめ
地震保険は、火災保険と付帯して契約する保険で、火災保険ではカバーできない地震・津波・噴火による住宅・家財被害を補償する保険です。
持ち家なら地震保険の必要性は高いですが、賃貸住宅では地震保険に加入する必要性は下がります。
地震保険の保険料は、建物構造と都道府県で決まりますが、割引制度や一括払いで安くできるため、地震保険を契約する際はチェックしてみてください。
Q&A
Q1 地震保険と火災保険の違いは?
A1 地震保険では、火災保険ではカバーできない地震・津波・噴火による被害を補償する。地震保険は火災保険とセットで加入することになり、単独では加入できない。
Q2 地震保険の保険料を安くする方法は?
A2 地震保険の保険料は、建物構造と都道府県で決まる。割引制度(「耐震等級割引(耐震等級3)」「免震建築物割引」)を使うと最大50%安くなり、長期契約の一括払いでも安くなる。
Q3 結局、地震保険は必要?
A3 持ち家なら地震保険の必要性は高いが、賃貸なら地震保険の必要性は低い。