更新日:2025.6.20
葬儀保険ってどう?本当に必要か?

葬儀保険を検討しているものの、「葬儀保険ってどんな保険?」「葬儀保険は本当に必要?」など、疑問に思っている方も少なくないのではないでしょうか。
葬儀保険は、残された家族のために葬儀費用を捻出することを目的とした、少額生命保険です。
ただ、統計によると、葬儀費用は50万円〜200万円弱程度であり、日本人の2人に1人以上は葬儀保険の対象となる85歳を超えて生存するというのが実際の所です。
本記事では、葬儀保険の仕組みや保障内容、実際の葬儀費用の相場や日本人の平均寿命、民間の葬儀保険の比較などについて解説しています。
Contents
葬儀保険とは
葬儀保険とは何か?仕組みと保障内容
葬儀保険は、葬儀費用の支払いに備えることを目的とした保険です。
少額短期保険の一種で、一般的な生命保険に比べて保障金額は低めに設定されていますが、その分、加入しやすく手続きも簡便で、年齢や健康状態による制限が少ないのが特徴です。
葬儀保険は、貯蓄性のない掛け捨て型である点に注意が必要です。
つまり、葬儀保険とは呼ばれるものの、その実態は短期の少額生命保険となっています。
更新時の年齢に応じて保険料が上がるため、60歳や65歳頃から契約しておかないと、年齢が上がってからでは保険料は割高になってしまいます。
保障金額は数十万円から100万円程度が一般的で、契約時に決められた金額が、保険金として遺族に支払われる仕組みです。
保険金は、葬儀会社に直接支払う方式を採用している商品もあり、遺族の手間を軽減する設計の商品もあります。
生命保険との違いとしては、生命保険が死亡時に遺族の生活費や教育費を広くカバーするのに対し、葬儀保険は「葬儀費用の補填」に特化している点です。
葬儀の準備は突然やってくることが多く、費用の工面に困るケースも少なくありません。そうした負担を軽減する手段として、葬儀保険は注目されています。
葬儀費用はどのくらいかかる?
実際の葬儀費用の相場とその内訳
葬儀費用は、形式や地域、参列者数などによって異なります。
終活サービスを提供する鎌倉新書が運営する葬儀相談依頼サイト「いい葬儀」が2024年3月に実施した「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」の調査結果を見ていきましょう。
同調査では、葬儀費用の総額は118.5万円、費用の内訳は基本料金75.7万円、飲食費20.7万円、返礼品費22.0万円になったとのことです。
また、葬儀の種類別の総額と割合は次のようになったとのことです。
葬儀の種類 | 費用総額 | 葬儀の割合(全体100%) |
---|---|---|
家族葬 | 105.7万円 | 50.0% |
一般葬 | 161.3万円 | 30.1% |
一日葬 | 87.5万円 | 10.2% |
直葬・火葬式 | 42.8万円 | 9.6% |
※出典:いい葬儀「【第6回】お葬式に関する全国調査(2024年) アフターコロナで葬儀の規模は拡大、関東地方の冬季に火葬待ちの傾向あり」
なお、葬儀の種類については、次の通りです。
● 家族葬:通夜・葬儀・告別式のある葬式。参列者は親族や近親者のみ。
● 一般葬:通夜・葬儀・告別式のある葬式。参列者は知人、地域の方、職場の人など。
● 一日葬:通夜がなく告別式のみの1日の葬式。
● 直葬・火葬式:宗教儀式のない、火葬のみの葬式。
一般葬でやや豪華に行う場合には150万円を超える額となり、家族葬であったとしても100万円は掛かり、直葬であったとしても50万円は見積もりたい額となっています。
葬儀保険への加入の是非は置いておくとしても、自分や両親・祖父母の葬儀にこの程度のお金は掛かるということは押さえておくようにしましょう。
主要な葬儀保険商品の比較
民間の葬儀保険を徹底比較
葬儀保険は、少額保険ということもあり、あまりメジャーな保険商品ではありません。
民間の代表的な葬儀保険については、次のようになっています。
葬儀保険 | 月額保険料 | 加入年齢 |
---|---|---|
アイアル少額短期保険「終活相談付き みんなの葬儀保険」 | 2,030円 | 84歳まで(更新は99歳まで) |
富士少額短期保険「できる!死亡保険」 | 1,830円 | 89歳まで(更新は100歳まで) |
SBIいきいき少額短期保険「SBIいきいき少短の死亡保険」 | 2,450円 | 84歳まで(更新は99歳まで) |
メモリード・ライフ「はじめやすい葬儀保険」 | 2,110円 | 89歳まで(更新は99歳まで) |
健康年齢少額短期保険「やさしい終活保険」 | 3,370円 | 89歳まで(更新は94歳まで) |
あんしん少額短期保険「みんなのキズナ」 | 2,200円 | 84歳まで(更新は99歳まで) |
※月額保険料は、65歳男性が保険金額100万円で加入した場合。
いずれの葬儀保険も、掛け捨て型の少額生命保険となっており、貯蓄性はない点に注意しておきましょう。
加入年齢を超えて長生きした場合には、掛け捨てになってしまいます。
例えば、65歳から月額2,500円で加入して、85歳まで生きた場合には、月額2,500円×20年間×12ヶ月=60万円が掛け捨てになります。
加入年齢を超えて更新もできますが、この場合には、保険料が加入年齢で再計算されるため、保険料が大きく上がってしまう点に注意が必要です。
具体的には、アイアル少額短期保険「終活相談付き みんなの葬儀保険」の場合、85歳更新時の月額保険料は14,290円まで跳ね上がります。
保険料別の葬儀保険選択
月額500円の葬儀保険でどこまでの保障が可能か?
月額500円の葬儀保険で、どこまでの保障が可能なのかを、価格.comで人気トップの葬儀保険であるアイアル少額短期保険「終活相談付き みんなの葬儀保険」を例に見ていきましょう。
同保険では、60〜64歳男性の場合、月額保険料490円で、30万円の保障が可能となっています。
65〜69歳女性の場合、月額保険料510円で、50万円の保障が可能となっています。
月額1000円の葬儀保険の保障内容と費用対効果
月額1,000円の葬儀保険で、どこまでの保障が可能なのかを、アイアル少額短期保険「終活相談付き みんなの葬儀保険」を例に見ていきましょう。
同保険では、65〜69歳男性の場合、月額保険料1,070円で、50万円の保障が可能となっています。
65〜69歳女性の場合、月額保険料890円で、100万円の保障が可能となっています。
葬儀保険には入るべきではない?データから検証
十分な備えがあるなら葬儀保険は合理的ではない
月額500円であろうと、月額1,000円であろうと、同じ額を葬儀保険に使うなら、新NISAなどの積み立てに使った方が合理的というのが実際の所です。
実際の統計データを見てみましょう。
厚生労働省の「簡易生命表(令和5年)」によると、2023年の日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性87.14歳となっています。
平均寿命の計算には、幼児や若年で亡くなった人も含まれているため、65歳まで生存した人の残りの寿命はより長くなります。
65歳男性の平均余命は19.52歳、65歳女性の平均余命は24.38歳となっています。
単純計算するだけでも、65歳まで生きた半分以上の人は、平均的に85歳超まで生きるため、85歳までの葬儀保険の半分程度は掛け捨てになってしまうということです。
当然ながら、保険会社も儲からない保険を売るわけがありません。
葬儀費用の平均は、直葬でも50万円、一般葬でも200万円弱という統計が出ています。
既にこの程度の蓄えがあるなら、わざわざ葬儀保険に加入する合理性はありません。
葬儀保険の選び方と注意点
葬儀保険を選ぶ際の重要なチェックポイントは?
葬儀保険を選ぶ際には、次の点を確認しておくようにしましょう。
● 設定された保険金額が妥当かどうか
● 保険金の支払い条件
● 免責期間の確認
● 保険料の支払期間と更新の有無
● 保険会社の信頼性
まず注目すべきは、設定された保険金額が妥当かどうかです。
葬儀費用は地域によって差があり、都市部では100万円以上かかる場合もあれば、地方では比較的安価で済むこともあります。
また、葬儀会社と生前から契約しておけば、割引制度が使えて、葬儀費用を安くできる場合もあります。
葬儀保険の保険金額が、希望する葬儀の規模や形式に見合った金額設定になっているかを見極めましょう。
次に、「保険金の支払い条件」と「免責期間の確認」も重要です。
多くの葬儀保険には「免責期間」があり、その期間中に亡くなった場合は一部しか保険金が支払われない、あるいは支払われないケースもあります。
また、自然死と事故死で支払額が異なる商品もあるため、パンフレットや約款をよく読み、条件をしっかり把握しておくようにしましょう。
そのほか、「保険料の支払期間や更新の有無」や「保険会社の信頼性」なども判断材料になります。
安さだけで選ぶと、必要なときに十分な保障を受けられないこともあるため、総合的に比較・検討するようにしてください。
葬儀保険加入時によくある失敗例とその回避法
葬儀保険に加入する際、うっかり見落としがちなポイントが原因で、思わぬトラブルにつながることがあります。
その一つが「告知義務違反」です。
多くの葬儀保険では、健康状態の告知が不要、または簡易なものとなっていますが、虚偽の申告や既往症の隠蔽が後に判明すると、保険金が支払われない場合があります。
また、加入後に家族に伝えていなかったために、死亡後に保険金請求がされず、結果として保障を受けられなかったという事例も少なくありません。
葬儀保険は、遺族が速やかに活用することを前提とした保険のため、保険証券の保管場所や連絡方法を家族と共有しておくことが不可欠です。
さらに、毎月の保険料を払っていたものの、途中で支払いが滞り無効になってしまったというケースもあります。口座引き落としの確認や支払い管理にも注意が必要です。
加入後のトラブルを防ぐためにも、家族との情報共有を心がけるようにしておきましょう。
まとめ
葬儀保険は、葬儀費用の捻出を目的とした、少額生命保険です。
統計によると、葬儀費用は葬儀の内容によって50万円〜200万円弱程度が相場となっており、日本人の2人に1人以上は葬儀保険の対象となる85歳を超えて生存します。
すでに葬儀費用分の貯蓄があるなら、葬儀保険への加入は合理的ではないというのが実際の所です。
Q&A
Q1 葬儀保険への加入が必要なのはどんな人
A1 自分の死後、残された家族へ葬儀費用を残せない人。葬儀費用以上の貯蓄があるなら、葬儀保険への加入は合理的ではない。
Q2 葬儀費用はどの位かかる?
A2 一般葬でやや豪華に行う場合には150万円超、家族葬であったとしても100万円はかかり、直葬であったとしても50万円は必要。
Q3 葬儀保険の注意点は?
A3 少額生命保険であるため、加入年齢の85歳を超えると掛け捨てとなり、更新するには保険料が数倍に跳ね上がる。