更新日:2025.6.10
定期預金がおすすめされない理由は?もしやるならどこがいいか

皆さんは「定期預金」について、どのようなイメージをお持ちでしょうか。「安全確実だけれど、あまり増えない」そういった声が聞こえてきそうです。
確かに、かつては魅力的な運用方法の一つでしたが、現代の低金利時代においては、専門家があまりおすすめしない金融商品となっています。
この記事では、なぜ定期預金がおすすめされないのか、その理由を深掘りしつつ、もし定期預金を選ぶならどのような点に注意すべきか、そして銀行側の事情まで解説します。
Contents
定期預金の問題点
なぜ専門家は定期預金をおすすめしないのか?
● 低金利時代における実質的なマイナス利回りの実態
現在の日本は依然として低金利環境が続いています。大手銀行の定期預金金利は、例えば年0.02%~0.05%程度(2025年4月時点、金融機関や条件により異なります)という水準も見られ、依然として高いとは言えません。
仮に100万円を年0.02%で1年間預けた場合、利息は200円です。ここから約20%の税金が引かれると、手取りは160円程度になります。
この状況で重要になるのが「インフレ」です。
● インフレ率と税金を考慮した場合の資産目減りのメカニズム
インフレとは物価上昇でお金の価値が相対的に下がることです。年2%のインフレなら、100万円で買えた物が1年後には102万円必要になります。
先ほどの例で手取り利息が16円の場合、1年後の資産は100万160円です。しかし世の中のモノの値段が102万円の価値になっているとすると、実質的には資産価値が目減りします。
・預金による資産増加額 160円
・インフレによる必要金額増加額 100万円×2%=20,000円
・実質的な価値の変動 160円 – 20,000円 = -19,840円
このように、預金金利がインフレ率と税金分をカバーできない場合、実質的な購買力が下がる「資産目減り」が起こります。これが、専門家が低金利下での定期預金を積極的にはおすすめしない大きな理由です。
定期預金を選ぶなら、どこの金融機関がいいのか?
それでも「元本割れは避けたい」「一時的に資金を安全に置きたい」などの理由で定期預金を検討する方もいるでしょう。その場合、どの金融機関を選ぶべきでしょうか。
● 大手銀行とネット銀行の金利差と安全性の比較
定期預金を扱う金融機関には、大手都市銀行、地方銀行、信用金庫、ネット銀行などがあります。一般的に金利面で有利なのはネット銀行です。
ネット銀行は実店舗を少なくすることで経費を削減し、その分を預金金利に反映させる傾向があります。
以下は、一般的な金利と特徴の比較です。(2025年4月時点の目安であり、実際の金利は各金融機関の公式サイト等でご確認ください)
金融機関種類 | 定期預金金利 (1年もの、年率、目安) |
安全性 (預金保険制度) |
特徴 |
---|---|---|---|
大手銀行 | 0.02% 〜 0.05%程度(別途キャンペーン等が適用される場合あり) | 対象 | 全国ATM網、窓口相談可能、安心感がある |
ネット銀行 | 0.4% 〜 0.8%程度(条件やキャンペーンにより1%超も有り得る) | 対象 | 金利が比較的高め、手数料が安い、手続きがオンラインで完結 |
安全性については、日本の銀行の円預金は預金保険制度(ペイオフ)の対象です。万が一金融機関が破綻しても、預金者1人あたり、1金融機関ごとに元本1,000万円までとその利息が保護されます。これは大手銀行でもネット銀行でも同様です。
● 地方銀行や信用金庫に預ける際のリスク
地方銀行や信用金庫も預金保険制度の対象です。ただし、大手銀行や一部ネット銀行と比較すると、経営規模が小さい場合があり、金利やサービス面で見劣りすることがあるかもしれません。
地域の経済状況に経営が左右されやすい側面もありますが、健全経営の優良な金融機関も多数存在します。個別の情報をよく確認することが大切です。
外貨定期預金の実態
円建て定期預金の低金利から、より高い金利を求めて「外貨定期預金」に関心を持つ方もいるかもしれません。これは日本円を米ドルなどの外貨に換えて預け入れるものです。
一般的に円より金利の高い国の通貨で運用するため、高い利息が期待できますが、注意点も多いです。
外貨定期預金がおすすめされない本当の理由とは?
高金利は魅力的ですが、外貨定期預金には円預金にはない特有のリスクやコストが伴います。
● 高金利の裏に隠れた為替リスクと手数料の実態
外貨定期預金の最大の注意点は「為替変動リスク」です。預入時より円高(外貨に対し円の価値が上がる)になると、満期時に円に戻す際に元本割れする可能性があります。
例えば、1ドル150円の時に1万米ドル(150万円)を預け、金利が年5%でも、1年後に1ドル140円の円高になった場合を考えます。
利息は500米ドル、満期時の元利合計は1万500米ドルです。これを円に戻すと1万500米ドル×140円/ドル=147万円となり、当初の150万円より3万円少なくなります。高金利でも為替変動で損失が出ることがあります。
さらに「為替手数料」もかかります。円を外貨に換える時と外貨を円に戻す時の両方で発生し、無視できないコストです。
● 過去10年の運用実績から見る外貨預金の実質リターン
外貨預金の実質リターンは、金利だけでなく為替レートの変動に大きく左右されます。過去10年間の米ドル/円の為替レートは大きく変動しました。高金利通貨とされる他の通貨も同様に、為替レートは常に変動しています。
高金利を得られても、円高局面では為替差損が金利収入を上回るケースも少なくありません。したがって、外貨預金は為替リスクと手数料を十分に理解した上で検討する必要があります。
外貨預金と円預金、どのような判断基準で選ぶべきか?
では、外貨預金と円預金をどのように使い分ければ良いのでしょうか。
● 円安・円高予測と金利差を踏まえた通貨選択の考え方
将来の為替予測は専門家でも非常に困難です。そのため、為替予測だけに頼った通貨選択は危険です。
ご自身のライフプラン(海外旅行や留学の予定など)を考慮し、将来的に外貨が必要ならその通貨で一部資金を持つのは合理的かもしれません。
金利差も重要ですが、為替リスクと手数料を必ずセットで考える必要があります。一般的に高金利通貨は、その国のインフレ率が高かったり経済が不安定だったりすることも多く、リスクも高い傾向にあります。
● リスク許容度別の外貨預金活用法と注意点
外貨預金は全ての人におすすめできるものではありません。ご自身の「リスク許容度」(どの程度の損失なら受け入れられるか)を把握することが重要です。
● リスク許容度が高い方
資産の一部を使い、分散投資の一つとして検討の余地があります。ただし、経済情勢や為替動向を常にチェックする必要があります。
● リスク許容度が低い方
無理に外貨預金に手を出す必要はないでしょう。検討するとしてもごく少額にとどめるのが賢明です。
注意点として、外貨預金は一般的に預金保険制度の対象外です。また、中途解約が不利になる場合もあるので契約内容をしっかり確認しましょう。
定期預金の銀行側の論理
私たちが預金をする際、銀行はどのような役割を果たしているのでしょうか。
定期預金が銀行側にもたらすメリットとその仕組み
● 安定的な資金調達手段としての定期預金の位置づけ
銀行にとって、預金は重要な「資金調達源」です。特に定期預金は、一定期間資金が固定されるため、銀行にとっては比較的安定した資金となります。
銀行は集めた預金を企業や個人への貸し出し、有価証券運用などに使い、貸出金利や運用益から預金金利を支払った残りが収益の一部となります。
● 銀行の収益構造と定期預金金利設定の関係性
定期預金の金利は、主に以下の要因を考慮して決定されます。
・日本銀行の政策金利動向
・市場金利
・銀行の資金調達コスト
・貸出金利の水準
・他の金融機関の金利動向
・銀行の経営戦略
低金利が続く日本では、銀行が貸し出しや運用で大きな収益を上げることが難しく、預金者に支払う金利も低く抑えられています。
定期預金の選び方
それでも定期預金を利用する場合には、どのような点に気をつければ良いでしょうか。
定期預金の期間はどれを選ぶのがおすすめか?
● 金利上昇局面と下降局面それぞれの最適な預入期間
預入期間は数ヶ月から10年といった長期まで様々です。期間選択は将来の金利予測とご自身の資金計画によります。
現状の日本では低金利が続いていますが、将来的に金利が上昇する可能性もゼロではありません。金利動向に注目しましょう。
● 金利上昇局面
できるだけ短期間の定期預金を選び、満期ごとに高金利商品へ預け替えるのが有利です。
● 金利下降局面
できるだけ長期間の定期預金を選び、現在の金利を固定するのが有利です。ただし、長期固定しすぎると中途解約時に不利になる可能性があります。
● 定期預金のラダー運用とその効果的な構築方法
定期預金のラダー運用とその効果的な構築方法
金利予測が難しい場合や、まとまった資金を運用しつつ流動性も確保したい場合に有効なのが「ラダー(はしご)運用」です。預け入れる資金を複数に分割し、それぞれ異なる満期日の定期預金に預け入れます。
例えば500万円の資金を5分割し、1年、2年、3年、4年、5年満期の定期預金に100万円ずつ預けます。
預入金額 | 預入期間 | 満期時期 | 1年ごとの満期到来額 |
---|---|---|---|
100万円 | 1年 | 1年後 | 100万円 |
100万円 | 2年 | 2年後 | 100万円 |
100万円 | 3年 | 3年後 | 100万円 |
100万円 | 4年 | 4年後 | 100万円 |
100万円 | 5年 | 5年後 | 100万円 |
これにより毎年100万円ずつ満期が到来し、その時の金利情勢で再投資するか、必要な用途に使えます。
ラダー運用のメリットは以下の通りです。ご自身の資金量やライフプランに合わせて調整してみましょう。
● 金利変動リスクの分散
● 流動性の確保
● 手間が少ない
まとめ
今回は、定期預金がおすすめされない理由から、利用する場合の選び方、外貨預金の注意点まで解説しました。低金利の日本では、定期預金だけで資産を大きく増やすことは困難です。
インフレや税金を考慮すると、実質的に資産価値が目減りする可能性も理解しておく必要があります。
もし定期預金を利用するなら、ネット銀行など少しでも金利の高いところを選び、預入期間やラダー運用などを工夫することが大切です。外貨預金は為替リスクや手数料を十分に理解し、慎重に判断しましょう。
お金との付き合い方を見直すきっかけになれば幸いです。
Q&A
Q1.なぜ専門家は低金利時代の定期預金をおすすめしないのですか?
A1.低金利時代の定期預金は、得られる利息が非常に少ないためです。
例えば年利0.02%では100万円を1年間預けても税引後利息は百数十円程度です。これに対しインフレが進むと、お金の価値は実質的に目減りする可能性があります。
利息収入より物価上昇の影響が大きい場合、資産は実質的に減るため、積極的にはおすすめしにくいのです。
Q2.ネット銀行の定期預金は大手銀行に比べて安全面で劣るのでしょうか?
A2.いいえ、一般的にネット銀行の安全性が大手銀行に比べて劣るということはありません。
日本の法律に基づいて運営されている銀行であれば、大手銀行もネット銀行も同様に預金保険制度の対象です。万が一金融機関が破綻しても、預金者1人あたり元本1,000万円までとその利息が保護されます。
金利や手数料、使い勝手を比較してご自身に合った金融機関を選びましょう。
Q3.外貨定期預金を始める場合、一番注意すべき点は何ですか?
A3.外貨定期預金で一番注意すべき点は「為替変動リスク」です。
預入時より円高になると、満期時に日本円で受け取る際に元本割れする可能性があります。また、円と外貨の交換時には「為替手数料」がかかります。
これらのリスクとコストを十分に理解し、ご自身の資金計画やリスク許容度と照らし合わせて慎重に判断することが重要です。