更新日:2025.6.26
新NISAは何歳から始められる?年代別の活用法

2024年からスタートした新NISA(新しいNISA)に、多くの方の関心が集まっています。
「自分も始めてみたい」と考えたとき、まず気になるのが「一体、何歳から何歳まで利用できるのだろう?」という年齢に関する疑問ではないでしょうか。
資産形成は、年代やライフステージによって最適な方法が異なります。新NISAも同様で、ご自身の年齢に合わせた戦略を立てることが、そのメリットを最大限に引き出す鍵となります。
この記事では、新NISAの年齢制限という基本ルールから、10代・20代の若者、働き盛りの40代・50代、そしてセカンドライフを迎えた60代以上の方まで、それぞれの年代にぴったりの活用法を徹底解説します。
ぜひ、ご自身の未来を描きながら読み進めてみてください。
Contents
新NISAの年齢制限と基本ルール
新NISAは何歳から何歳まで利用できるのか?
まずは、新NISAの最も基本的なルールである「年齢」について、正確に理解しておきましょう。
・18歳以上からの口座開設と利用可能年齢の拡大
新NISAの口座を開設できるのは、その年の1月1日時点で日本国内に住む18歳以上の方です。2
022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられたことに伴い、高校生であっても18歳の誕生日を迎えていれば、親の同意なしに自分の意思でNISA口座を開設できるようになりました。
これにより、大学進学や就職といった早い段階から、将来を見据えた資産形成をスタートさせることが可能になったのです。
・年齢上限なしの無期限制度による高齢者の投資機会
新NISAの大きな特徴の一つが、利用できる年齢に上限がないことです。旧NISA制度には実質的な年齢の制約がありましたが、新NISAでは制度自体が恒久化され、何歳からでも始められるようになりました。
つまり、20歳の方も、60歳の方も、あるいは80歳を超えた方でも、18歳以上であれば誰でも、いつでも新NISAを始めることができます。
そして、非課税で商品を保有できる期間も無期限化されたため、一度始めたらずっと非課税の恩恵を受け続けることが可能です。
この変更は、特にシニア世代にとって、資産寿命を延ばすための新たな選択肢が生まれたことを意味しています。
年代別の新NISA活用戦略
新NISAは幅広い年代の方が利用できますが、成功の秘訣はご自身のライフステージに合わせた戦略を持つことです。
ここでは、対照的な2つの年代を例に、具体的な活用法と注意点を見ていきましょう。
18歳から始める新NISA投資の注意点
・長期投資期間を最大限活用した複利効果の威力
18歳から投資を始める最大のメリットは、「時間」という最も強力な武器を手にできることです。
長期間の投資を行うことで、「複利」の効果を最大限に享受できます。
複利とは、投資で得た利益(利子や分配金)を元本に加えて再投資することで、利益がさらに利益を生み、資産が雪だるま式に増えていく仕組みのことです。
【表1】毎月3万円を積立投資した場合の複利効果シミュレーション(年利5%と仮定)
投資期間 | 元本合計 | 資産評価額(概算) | うち運用収益 |
---|---|---|---|
10年間 | 360万円 | 約465万円 | 約105万円 |
20年間 | 720万円 | 約1,233万円 | 約513万円 |
30年間 | 1,080万円 | 約2,497万円 | 約1,417万円 |
40年間 | 1,440万円 | 約4,583万円 | 約3,143万円 |
上の表が示すように、投資期間が長くなるほど、運用収益の伸びが大きくなっているのが分かります。40年後には、利益が元本をはるかに上回る可能性もあるのです。
この複利の魔法こそ、若いうちから始める最大のメリットと言えるでしょう。
・若年層が陥りやすい投資リスクと適切なリスク管理
一方で、若年層は投資経験が浅いため、注意すべき点もあります。
SNSなどで話題の銘柄に安易に飛びついてしまったり、短期的な値上がりを狙ってハイリスクな投資に偏ってしまったりするケースです。
また、相場が下落した際に慌てて売却し、損失を確定させてしまう「狼狽売り」も避けなければなりません。
大切なのは、特定の銘柄に集中するのではなく、全世界株式のインデックスファンドなど、幅広く分散された商品をコツコツと長期間にわたって買い続けることです。
これがリスクを抑えながら、着実に資産を育てるための王道戦略となります。
65歳から新NISAを始める場合の効果的な活用法
・退職金活用と老後資金運用としての新NISA利用
65歳は、多くの方が退職金を手にし、セカンドライフをスタートさせる大きな節目です。
この大切な退職金を、ただ銀行に預けておくだけでは、近年の物価上昇(インフレ)によって実質的な価値が少しずつ目減りしてしまう恐れがあります。
そこで新NISAを活用し、退職金の一部を運用に回すことで、資産の価値をインフレから守り、緩やかに増やしていくことが可能になります。
目的は「大きく儲ける」ことではなく、「資産寿命を延ばす」ことです。
例えば、安定した分配金が期待できる債券ファンドや高配当株ETFなどを組み合わせ、老後の生活費を補うキャッシュフローを生み出す、といった活用法が考えられます。
・高齢者特有のリスク許容度と投資期間の考慮点
60代以降の資産運用で最も重要なのは、ご自身の「リスク許容度」を正しく把握することです。
若い世代のように、万が一損失が出ても時間で取り返す、ということが難しくなります。そのため、資産が大きく目減りする可能性のあるハイリスクな運用は避けるべきです。
投資する際も、退職金を一度に全額投じるのではなく、数年間にわたって少しずつ投資する「時間分散」を心がけましょう。
これにより、高値で一気に買ってしまうリスクを避けることができます。株式だけでなく、値動きの異なる債券などを組み合わせ、資産全体の値動きをマイルドにすることも、安心して運用を続けるための重要なポイントです。
旧NISAと新NISAの年齢に関する変更点
2023年までの旧NISA制度から新NISAへ移行したことで、年齢に関するルールも大きく変わりました。
NISAは何歳までできるのか?制度変更の影響
・新NISA移行による年齢制限撤廃のメリット
旧制度の「つみたてNISA」は、制度自体が2042年で終了する時限的なものでした。そのため、始めるのが遅いと、最長20年間の非課税投資期間をフルに活用できないというデメリットがありました。
しかし、新NISAではこの制度期間の定めがなくなり「恒久化」されました。これにより、何歳から始めても生涯にわたって非課税の恩恵を受けられるようになったのです。
これは、特にキャリアの後半に差し掛かった方や、退職後の資産形成を考えるシニア世代にとって、非常に大きなメリットと言えます。
・既存の旧NISA口座から新NISAへの移行手続き
2023年までに「つみたてNISA」や「一般NISA」の口座を持っていた方は、2024年になると、同じ金融機関に自動的に新NISAの口座が開設されています。特別な移行手続きは不要です。
ただし、旧NISAで保有している商品は、新NISAの非課税投資枠(生涯で1,800万円)とは別枠で、そのまま当初の非課税期間が満了するまで保有し続けることになります。
旧NISAの資産を売却して、その資金で新NISAの枠を新たに使うことは可能ですが、自動的に移管されるわけではないので注意が必要です。
年代別に見る新NISA投資枠の最適な使い方
新NISAには、コツコツ積立に適した「つみたて投資枠」(年間120万円)と、個別株などにも投資できる「成長投資枠」(年間240万円)があります。
この2つの枠を、年代別にどう使い分けるのが効果的でしょうか。
【表2】年代別の投資枠活用戦略例
年代 | 基本戦略 | つみたて投資枠の活用 | 成長投資枠の活用 |
---|---|---|---|
20代・30代 | 長期的な資産形成を最優先 | 収入に応じて上限を目指し、コア資産を築く | 余力があれば、つみたて投資枠と同様の商品を追加購入 |
40代・50代 | 資産形成の加速とリスク管理の両立 | コア資産として継続的に積立を行う | ライフプランに合わせて、高配当株やテーマ型ファンドなども検討 |
・20代・30代の長期積立中心戦略
この年代は、とにかく時間を味方につけられるのが強みです。
まずは「つみたて投資枠」を使い、全世界株式や全米株式などに連動する低コストのインデックスファンドへ、毎月コツコツ積立投資を続けるのが最も効果的です。
コアとなる資産をしっかりと築くことを最優先に考えましょう。
・40代・50代のバランス重視投資とリスク調整
40代・50代は、収入が増える一方で、住宅ローンや教育費など大きな支出も重なる時期です。老後も現実的な目標として見えてくるため、資産形成のペースを上げたいと考える方も多いでしょう。
「つみたて投資枠」での積立を継続しつつ、ボーナスや余裕資金を「成長投資枠」で運用するのがおすすめです。
成長投資枠では、インデックスファンドに加えて、安定した分配金収入を狙う高配当株ファンドを組み合わせるなど、ご自身の目標に合わせて戦略の幅を広げていくと良いでしょう。
家族全体での新NISA活用戦略
新NISAは個人の制度ですが、視点を広げることで、家族全体の資産計画にも大いに役立てることができます。
子どもの18歳到達を見据えた家族投資計画
・教育資金準備と新NISA開始時期の調整
2023年末で未成年者向けの「ジュニアNISA」は終了しました。今後、子どもの将来のための資金を非課税で準備するには、親自身のNISA口座を活用する方法が有効です。
例えば、親のNISA口座で「この部分は子どもの大学資金用」と決めて運用し、子どもが必要なタイミングで取り崩して教育資金に充てます。
また、子どもが18歳になったら、すぐに自分のNISA口座を開設できるようサポートしてあげることも重要です。
それまで親が準備してきた資金の一部を贈与し、子ども自身のNISA口座での投資元本とすることで、スムーズな資産のバトンタッチが可能です。
・親から子への投資知識継承と実践的な金融教育
親がNISAで資産運用する姿を日頃から見せることは、何よりの金融教育になります。
なぜお金を増やす必要があるのか、世界経済はどのようにお金と結びついているのか、といった話を食卓でするのも良いでしょう。
そして子どもが18歳になったとき、口座開設から商品選びまでを一緒に行うことで、子どもは実践的なお金の知識を身につけることができます。
これは、お金そのものを残す以上に価値のある、一生涯の財産となるはずです。
まとめ
新NISAは、成人である18歳以上であれば年齢の上限なく、誰でも、いつでも始められる画期的な制度です。
若いうちから始めれば「時間」を味方にした複利効果で資産を大きく育てることができ、シニア世代が始めれば大切な資産をインフレから守り、豊かなセカンドライフの支えとすることができます。
ご自身の年代とライフプランに合った方法で、ぜひこの非課税メリットを最大限に活用し、明るい未来への一歩を踏み出しましょう。
Q&A
Q1 学生でまだ収入が少ないのですが、新NISAを始める意味はありますか?
A1 はい、大いに意味があります。
大切なのは金額の大小ではなく、若いうちから投資を「始める」という経験そのものです。ネット証券などでは月々1,000円といった少額からでも積立が可能です。
まずは無理のない範囲で始め、経済のニュースに関心を持ったり、お金の働きを学んだりする習慣をつけることが、将来の大きな財産になります。
Q2 70代後半ですが、今から始めても遅すぎますか?
A2 決して遅すぎることはありません。
70代、80代からのNISA活用の主な目的は、資産を大きく増やすことよりも、インフレによる「資産の目減りを防ぐ」ことです。
預貯金の一部を、比較的リスクの低い世界の債券ファンドなどで運用するだけでも、何もしない場合に比べて資産の価値を維持しやすくなります。
ただし、リスクの取りすぎには注意し、ご家族とも相談しながら慎重に判断することが大切です。
Q3 夫婦で新NISAを始める場合、何かメリットはありますか?
A3 はい、大きなメリットがあります。
新NISAの非課税投資枠は個人単位で設定されるため、ご夫婦それぞれが口座を開設すれば、世帯全体で最大3,600万円(1,800万円×2人分)という大きな非課税枠を活用できます。
例えば、夫の口座では積極的な運用を、妻の口座では安定的な運用を行うなど、リスクを分散しながら効率的に資産形成を進めることが可能です。