更新日:2025.7.16
iDeCoの元本割れの確率は?リスクを軽減するには
老後の資産形成の有効な手段として注目されているiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)。税制上の大きなメリットがある一方で、「元本割れするリスクがある」と聞いて、なかなか一歩を踏み出せない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「大切なお金が減ってしまうのは怖い」「元本割れする確率はどのくらいなの?」そんな不安を感じるのは当然のことです。
しかし、iDeCoの元本割れのリスクは、仕組みを正しく理解し、適切な対策を講じることで十分にコントロールすることが可能です。この記事では、iDeCoの元本割れの確率や、元本割れが起こる理由、そしてそのリスクを賢く軽減するための具体的な方法を、年代別の視点も交えながら分かりやすく解説していきます。
この記事を読み終える頃には、きっとiDeCoに対する不安が解消され、前向きに老後資金準備を始められるようになっているはずです。
Contents
iDeCo投資における元本割れの基本

まずは、iDeCoで元本割れがどのくらいの確率で起こるのか、基本的なところから見ていきましょう。
iDeCoで元本割れする確率はどのくらいなのか?
iDeCoの資産は、私たちが選んだ運用商品によって日々価格が変動します。そのため、元本割れする可能性はゼロではありません。しかし、重要なのは「投資期間」です。
一般的に、投資は期間が長くなるほど、元本割れのリスクは低減する傾向にあります。
金融庁のデータによると、積立・分散投資を5年間続けた場合、元本割れする可能性が残る一方で、20年間続けた場合には、元本割れしたケースは確認されていません。
これはあくまで過去の実績であり、将来の運用成果を保証するものではありませんが、長期投資の有効性を示す一つのデータと言えるでしょう。
長期的に運用することで、一時的な市場価格の下落があっても、その後の価格回復の恩恵を受けやすくなるためです。
また、定期的に一定額を買い続ける「ドルコスト平均法」の効果により、価格が低いときには多く、高いときには少なく買うことができ、平均購入単価を抑える効果も期待できます。
つまり、iDeCoのように長期的な視点でコツコツと資産を積み立てていく制度は、元本割れのリスクを抑えやすい仕組みになっているのです。
運用商品によっても、元本割れのリスクは大きく異なります。iDeCoで選べる主な運用商品は、「投資信託」と「元本確保型商品」の2種類です。
投資信託はさらに、その投資対象によっていくつかのタイプに分かれます。
● 運用商品別の元本割れ発生率と投資期間による変化
投資信託の運用成果は、投資期間に大きく左右されます。短期的な視点で見れば、市場の変動によって元本割れする可能性は十分にあります。
例えば、世界的な経済ショックが起きた直後などは、多くの投資信託の価格が下落します。
しかし、iDeCoは原則60歳まで引き出せないという特性上、必然的に長期投資になります。
10年、20年、30年と運用期間が長くなるにつれて、一時的な下落は平均化され、世界経済の成長の恩恵を受けて資産が増加していく可能性が高まります。
iDeCoで元本割れを過度に恐れる必要がないのは、この「時間の力」を味方につけられる制度だからです。
● 株式型・バランス型・債券型ファンドのリスク水準比較
投資信託は、主に何に投資するかによってリスクとリターンの度合いが変わります。代表的な3つのタイプを比較してみましょう。
| ファンド種類 | 主な投資対象 | リスク | リターン | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 株式型ファンド | 国内外の株式 | 高い | 高い | 大きなリターンが期待できるが、価格変動も大きい |
| 債券型ファンド | 国内外の国債や社債 | 低い | 低い | 値動きが比較的安定しているが、大きなリターンは期待しにくい |
| バランス型ファンド | 株式、債券など複数の資産 | 中程度 | 中程度 | 自動的に分散投資を行ってくれるため、リスクが抑えられている |
一般的に、高いリターンを期待できる商品は、それ相応のリスクを伴います。ご自身の年齢やリスク許容度に合わせて、これらの商品を組み合わせて運用することが、iDeCo成功の鍵となります。
iDeCo元本確保型商品の実態

元本割れが怖いという方のために、iDeCoには「元本確保型商品」という選択肢もあります。これらは主に定期預金や保険商品で、満期まで保有すれば元本が保証される安心感が魅力です。
しかし、この元本確保型が「意味ない」と言われることがあるのはなぜでしょうか。
iDeCoの元本確保型が「意味ない」と言われる理由とは?
元本が保証されるなら安心、と考えるのは自然なことです。しかし、元本確保型には知っておくべきデメリットが存在します。
● 超低金利環境下での実質的なマイナス利回りの現実
かつての超低金利時代、元本確保型の代表である定期預金の金利は年0.002%程度と、無いに等しい水準でした。
2024年以降の政策変更により金利は上昇し、現在では年0.2%~0.5%程度の金利が見られるようになりました。
しかし、この金利上昇をもって「元本確保型が有利になった」と判断するのは早計です。なぜなら、iDeCoには年間最低でも約2,000円の手数料がかかるためです。
例えば、年利0.5%の商品でも、年間の平均残高が40万円に達するまでは利息が手数料を下回り、実質的な元本割れとなります。
加えて、現在のインフレ率(年2%程度)を考慮すると、お金の価値は実質的に目減りしてしまいます。
iDeCoの最大のメリットである「運用益非課税」を活かし、インフレに負けないリターンを目指す上では、依然として投資信託の活用が重要と言えるでしょう。
● インフレリスクと機会損失による資産価値の目減り
もう一つの大きなリスクが「インフレ」です。インフレとは、物価が上昇し、お金の価値が下がることです。例えば、年2%のインフレが続くと、現在100万円で買えるものが、1年後には102万円出さないと買えなくなります。
元本確保型で運用して資産の額面(100万円)が変わらなくても、世の中の物価が上がってしまえば、そのお金で買えるモノの量は減ってしまいます。つまり、資産の「実質的な価値」が目減りしてしまうのです。
さらに、本来であれば投資信託で運用することで得られたかもしれない利益を逃してしまう「機会損失」も無視できません。
長期的に見れば世界経済は成長を続けており、その成長の恩恵を受けられないことは、将来の資産額に大きな差を生む可能性があります。
これらの理由から、iDeCoの大きなメリットである「運用益非課税」の効果をほとんど活かせず、手数料やインフレを考慮すると、元本確保型を選ぶことは必ずしも賢明な選択とは言えない場合があるのです。
iDeCo元本割れ時の税制上の取り扱い
では、もし投資信託を選んで、実際に元本割れしてしまった場合、税金はどうなるのでしょうか。心配になるかもしれませんが、iDeCoの強力な税制メリットは、元本割れしたとしても無駄にはなりません。
iDeCoで元本割れした場合の税金への影響は?
iDeCoには大きく分けて3つの税制メリットがあります。「拠出時」「運用時」「受取時」です。このうち、特に重要なのが「拠出時」のメリットです。
● 拠出時の所得控除と受取時の課税関係
iDeCoで拠出した掛金は、その全額が「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象になります。これにより、その年の所得税と翌年の住民税が軽減されます。
この所得控除のメリットは、その年の年末調整や確定申告で完了するため、将来の運用成果がプラスであろうとマイナス(元本割れ)であろうと、全く関係なく受け取ることができます。
例えば、年収500万円の会社員が毎月2万円(年間24万円)をiDeCoに拠出した場合、所得税と住民税を合わせて年間で約48,000円の節税効果が期待できます(税率は所得により異なります)。
これは、拠出を続ける限り毎年得られる、非常に大きなメリットです。
そして、60歳以降に資産を受け取る際に元本割れしていた場合を考えてみましょう。
iDeCoの受取金には税金がかかりますが、それはあくまで「利益」に対してです。
元本割れしているということは、利益が全く出ていない状態なので、当然ながら課税されることはありません。
● 元本割れでも享受できる税制メリットの実態
つまり、仮に運用がうまくいかず、拠出額120万円が110万円に元本割れしてしまったとしても、5年間で得られた節税メリット(上記の例なら48,000円×5年=24万円)を考慮すれば、トータルではプラスになっている計算になります。
運用益が出れば非課税というメリットも大きいですが、それ以上に「拠出時の所得控除」がiDeCoの基盤を支える強力なメリットなのです。この点を理解すれば、元本割れに対する過度な不安は和らぐのではないでしょうか。
iDeCo元本割れリスクの軽減策

iDeCoの元本割れリスクはゼロではありませんが、商品選択を工夫することで、そのリスクを抑えることが可能です。ここでは、初心者の方でも実践しやすい具体的な方法をご紹介します。
iDeCoの商品選択で元本割れリスクを抑える方法
やみくもに商品を選ぶのではなく、リスク分散の基本を押さえることが重要です。
● インデックスファンドによる低コスト分散投資
投資初心者の方にまずおすすめしたいのが、「インデックスファンド」です。
インデックスファンドとは、日経平均株価や米国のS&P500といった、市場全体の動きを示す特定の指数(インデックス)に連動する運用成果を目指す投資信託です。
一つのインデックスファンドを買うだけで、その指数を構成する多数の企業(例えば日経平均なら225社、S&P500なら約500社)に自動的に分散投資することができます。
特定の企業の業績不振といった個別リスクを避けながら、市場全体の成長を享受できるのが大きな魅力です。
また、インデックスファンドは、専門家が積極的に銘柄を選定する「アクティブファンド」に比べて、運用にかかるコスト(信託報酬)が低い傾向にあります。
長期運用となるiDeCoでは、この低コストという点が、将来の受取額に大きな影響を与えます。
● バランスファンドとターゲットイヤーファンドの活用
「どの資産にどれくらいの割合で投資すればいいか分からない」という方には、「バランスファンド」が便利です。
バランスファンドは、国内外の株式や債券など、値動きの異なる複数の資産を、あらかじめ決められた配分で組み合わせて運用してくれる商品です。
これ一本で国際的な分散投資が完結するため、自分で資産配分を考える手間が省けます。リスク水準に応じていくつかの種類(安定型、成長型など)が用意されているので、自分の考えに合ったものを選びましょう。
さらに、「ターゲットイヤーファンド」という選択肢もあります。これは、自分の目標とする年(ターゲットイヤー、通常は退職する年に設定)に向けて、資産配分を自動で変更してくれるファンドです。
若い頃は株式の比率を高くして積極的にリターンを狙い、目標年が近づくにつれて安定的な債券の比率を高め、資産を守る運用に切り替えてくれます。
これらのファンドは、投資の知識に自信がない方や、自分で管理する時間がない方にとって、元本割れリスクを抑えながら手間なく運用できる有効な選択肢です。
| ファンド種類 | メリット | デメリット | こんな人におすすめ |
|---|---|---|---|
| インデックスファンド | 低コストで幅広い分散投資が可能 | 市場平均以上のリターンは狙えない | コストを抑えてコツコツ運用したい人 |
| バランスファンド | 1本で国際分散投資が完結する | 自分の好きな配分にはできない | 資産配分を考えるのが難しい人 |
| ターゲットイヤーファンド | 年齢に合わせて自動でリスク調整してくれる | 途中で積極運用に切り替えにくい | 完全に「おまかせ」で運用したい人 |
年代別のiDeCo元本割れ対策

iDeCoの運用戦略は、年代によって異なります。残された運用期間の長さが、取れるリスクの大きさに直結するからです。ここでは、年代別の元本割れとの向き合い方について考えてみましょう。
20代・30代のiDeCo運用における元本割れへの向き合い方
20代や30代の方は、iDeCoの運用期間を30年、40年と非常に長く確保できます。これが最大の強みです。
● 長期投資期間を活かした積極的なリスクテイク
長い運用期間があるということは、たとえ一時的に元本割れするような市場の暴落があっても、価格が回復するまでじっくりと待つ時間があるということです。
歴史的に見ても、世界経済は短期的な浮き沈みを繰り返しながらも、長期的には右肩上がりに成長してきました。
そのため、20代・30代の方は、リスクを恐れずにリターンを追求する「積極的な運用」が可能です。
例えば、全世界の株式に投資するインデックスファンドや、成長が期待される米国株式のインデックスファンドなどを中心に資産配分を組むことで、将来の大きな資産形成が期待できます。
● 若年期の元本割れを恐れすぎることの機会損失
若い時期に元本割れを恐れるあまり、元本確保型商品ばかりで運用してしまうと、本来得られたはずの大きなリターンを逃す「機会損失」につながりかねません。
むしろ、価格が下落している局面は、同じ掛金でより多くの口数を購入できる「絶好の買い場」と捉えるくらいの余裕を持ちたいところです。
長期的な視点に立てば、若いうちの元本割れは、将来の資産を増やすためのステップと考えることもできます。
50代・60代のiDeCo運用で元本割れを避ける方法
一方、50代や60代の方は、資産の受け取り開始時期が目前に迫っています。この年代では、「資産を増やす」ことよりも「築いた資産を守る」ことへ意識をシフトしていく必要があります。
● 受取開始時期を見据えたリスク資産比率の段階的削減
受け取りを開始する直前に大きな市場の暴落が起きてしまうと、回復を待つ時間が十分にありません。
そうした事態を避けるため、年齢を重ねるにつれて、リスクの高い株式型ファンドの比率を段階的に減らし、値動きの安定した債券型ファンドや元本確保型商品の比率を高めていく「リバランス(資産配分の見直し)」が重要になります。
例えば、50歳までは株式100%で運用してきた人も、55歳になったら株式70%・債券30%、そして60歳の受け取り開始時には株式30%・債券50%・元本確保型20%といったように、徐々に安定運用へ移行させていきます。
● 元本確保型への移行タイミングと配分調整
どのタイミングで、どのくらいの割合を元本確保型に移すかは、ご自身の資産状況やリスク許容度によって異なります。
一つの目安として、退職金などiDeCo以外の資産がどれくらいあるかを考慮し、老後の生活に最低限必要な金額分から優先的に元本確保型に移していく、という考え方もあります。
自分で配分を調整するのが難しい場合は、前述したターゲットイヤーファンドを活用するのも有効な手段です。
いずれにせよ、60歳というゴールを見据えて、計画的に資産を守る運用に切り替えていくことが、50代・60代の元本割れ対策の基本となります。
まとめ
iDeCoの元本割れは、多くの方が不安に感じる点ですが、そのリスクはコントロール可能です。
重要なのは、長期的な視点を持つことです。運用期間が長くなるほど元本割れの確率は低下する傾向にあります。
また、インデックスファンドなどを活用した低コストの分散投資を心がけることで、リスクを効果的に抑えることができます。
さらに、拠出時の所得控除という強力な税制メリットがあるため、たとえ元本割れしてもトータルでは損をしていないケースも少なくありません。
ご自身の年代に合った運用方法で、賢くiDeCoを活用し、豊かな老後への第一歩を踏み出しましょう。
Q&A
Q1.iDeCoで元本割れしたら、すぐに商品を売却して損失を確定させた方が良いのでしょうか?
A1.いいえ、慌てて売却するのはおすすめしません。
iDeCoは長期運用を前提とした制度です。市場は常に変動しており、価格が下がった後に回復することは歴史が証明しています。
特に運用期間が長く残っている若い世代の方は、価格が下落した時を「安くたくさん買えるチャンス」と捉え、これまで通り積立を継続することが、将来の資産を増やす上で非常に重要です。
Q2.投資の知識が全くありません。それでもiDeCoを始めることはできますか?
A2.はい、もちろんです。
投資の知識に自信がない方のために、iDeCoには初心者向けの分かりやすい商品が用意されています。
例えば、1本で世界中の株式に分散投資できる「全世界株式インデックスファンド」や、資産の組み合わせを専門家におまかせできる「バランスファンド」などから始めてみるのが良いでしょう。
これらは、自分で複雑なことを考えなくても、リスクを抑えた運用が始められるように設計されています。
Q3.転職や退職で会社員でなくなった場合、iDeCoの資産はどうなりますか?
A3.転職や退職をしても、それまでiDeCoで積み立てた資産がなくなることはありませんのでご安心ください。
ただし、iDeCoの加入者資格を喪失してから6ヶ月以内に移換等の手続きを行わないと、資産が国民年金基金連合会に自動的に移換(自動移換)され、手数料がかかり続ける一方で運用はされなくなるなどのデメリットがあるため注意が必要です。
転職先に企業型確定拠出年金(企業型DC)があればそこに資産を移換できますし、自営業者や専業主婦(主夫)になる場合はそのままiDeCoを継続できます。
いずれにせよ、速やかな手続きを忘れないようにしましょう。









