更新日:2025.6.25
一括投資でほったらかし運用はうまくいくか?何に投資すべきか

一括投資でほったらかし運用をしたいけど、「一括投資しても大丈夫?」「一括投資では何に投資すべき?」など、お困りの方も少なくないのではないでしょうか。
一括投資とは、年初にその年の投資額を一気に投資してしまうことです。具体的に年60万円の投資なら、1月に60万円を投資します。
一括投資でほったらかし運用をしたい場合には、新NISAを使って、S&P500指数やオルカンに連動するインデックスファンドがおすすめです。
本記事では、一括投資と積立投資の違い、S&P500指数を20年間一括投資した場合のシミュレーション、新NISAを使った場合の違いなどについて解説しています。
Contents
一括投資とほったらかし運用の基本
一括投資によるほったらかし運用とは何か?その特徴と仕組み
一括投資とは、投資対象となる銘柄を、年一回の投資で済ませてしまうことです。
より具体的には、年初に一括投資するケースが多くなっており、「年初一括購入」などとも呼ばれます。
一括投資の対義語となるのは「積立投資」です。
なお、「ほったらかし投資」とは、その名の通り、投資したら、ほったらかしたまま放置しておくことを意味します。
新NISAを使って、一括投資をする場合と積立投資をする場合について考えてみましょう。
新NISAでは、成長投資枠が年240万円、つみたて投資枠が年120万円、合計で年間360万円となっており、累計1,800万円まで(成長投資枠は1,200万円まで)投資可能です。
今回は、年60万円の投資を30年間継続して、新NISA枠を埋めるケースについて、一括投資と積立投資について考えてみます。
一括投資の場合は、毎年初めに60万円を投資します。
積立投資では、毎月5万円ずつ投資していき、年合計60万円投資します。
なお、「一括投資では、長期・積立・分散投資にならないのではないか?」と思うかもしれませんが、しっかりと年分散されているため問題ありません。
一括投資のメリットは、投資する銘柄が年内(2月~12月)に大きく上昇した場合には、その分の利益を得られるため、積立投資よりも利益が大きくなる可能性がある点です。
一括投資のデメリットは、投資する銘柄が年内に暴落した場合には、積立投資よりも利益が減ってしまい、暴落時に安く仕込めないことが挙げられます。
項目 | 一括投資 | 積立投資 |
---|---|---|
やり方 | 年初1回の投資で済ませる | 毎月積み立てていく |
新NISAで年60万円投資する場合 | 1月年始に60万円投資する | 毎月5万円ずつ投資する |
メリット | 年内に上昇した場合に利益が大きくなる | 年内に暴落した場合にリスクヘッジできる |
デメリット | 暴落があった場合に安く買えない | 年内に大きく上昇した場合には利益が小さくなる |
一括投資と積立投資は、一長一短であり、どちらが良いとは一言には言えません。
ただ、S&P500指数やオルカン(世界株投信)のように長期で上がり続けている銘柄については、一括投資の方がやや成績が良くなっています。
S&P500への一括投資戦略
S&P500に一括投資したシミュレーション結果はどうなるか?
S&P500指数は、米国株を代表する500銘柄で構成される、時価総額加重平均型の米国株指数です。
S&P500指数は、長期で上がり続けており、最高値を更新し続けているため、一括投資・積立投資のいずれの場合であっても、長期的に大きな利益になっています。
具体的には、S&P500指数は20年前の2005年1月時点では1,213.43ポイントを付けていましたが、2025年6月15日時点では5,976.96ポイントとなっており、20年間で4.92倍となっています。
仮に、S&P500指数に、20年間(2005~2024年)、年初に一括投資していた場合のシミュレーション結果は次の通りです(いずれの値もS&P500指数の年始の値)。
年 | S&P500指数(年始一括購入) |
---|---|
2005 | 1,213.43 |
2006 | 1,252.03 |
2007 | 1,418.03 |
2008 | 1,467.97 |
2009 | 902.99 |
2010 | 1,116.56 |
2011 | 1,257.62 |
2012 | 1,258.86 |
2013 | 1,426.19 |
2014 | 1,845.86 |
2015 | 2,058.90 |
2016 | 2,038.20 |
2017 | 2,251.57 |
2018 | 2,683.73 |
2019 | 2,476.96 |
2020 | 3,244.67 |
2021 | 3,764.61 |
2022 | 3,778.14 |
2023 | 3,853.29 |
2024 | 4,745.20 |
平均取得単価 | 2,202.7405 |
S&P500指数を2005年から2024年の20年間、年始一括投資していた場合の平均取得単価は2,202.74ポイントとなります。
2025年6月15日時点では5,976.96ポイントと2.71倍となっているため、仮に毎年60万円、合計1,200万円投資していたとしたら、3,256万円になっていた計算となります。
これは年始一括投資をしていた場合のシミュレーションとなりますが、毎月5万円の積立投資でもほとんど変わりません(一括投資の方がわずかに有利)。
なお、上記の推移を見ると、実は2008年から2012年まではマイナスとなっています。2008年にリーマンショックがあり、回復するまでに5年間掛かったためです。
とはいえ、リーマンショック級の暴落があっても、長期・積立・分散投資を継続していれば、長期ではプラスになっていたことはインデックス投資の強みです。
新NISAを活用した一括投資シミュレーション
新NISAでほったらかし一括投資を行った場合のシミュレーション
仮に今後、S&P500指数が直近20年間と同じ上昇率(2.71倍)となった場合、新NISAを使うのと使わないのとでは、非常に大きな差が生じてきます。
新NISA枠でS&P500指数の投資信託やETF(上場投資信託)に投資していれば、値上がり益・分配金のいずれも恒久的に非課税となります。
合計1,200万円投資して、2.71倍の3,256万円となっていた場合には、含み益は2,056万円となります。
税金は売却するまでは発生しませんが、利益に対して20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の申告分離課税となります。
新NISAを使わずに投資していた場合には、売却すると417万6,764円の税金が発生します。
つまり、新NISA枠で投資していた場合には、20年間で約417万円分の税金を払わずに済むということです。
一括投資と積立投資については長期ではそこまで大きな差は出ませんが、新NISAを使うかどうかでは非常に大きな差が出ます。
必ず、新NISAを活用するようにしてください。
投資信託での一括投資戦略
投資信託に一括投資したシミュレーション結果の読み方
投資信託に投資するとして、「アクティブファンドとインデックスファンドのどちらが良いのか?」という問いが浮かぶことかと思います。
投資における一般論としては、「アクティブファンドは長期的にはインデックスファンドに収束するため、信託報酬が低いインデックスファンドの方が有利である」というものです。
例えば、米国株の場合、S&P500指数やNASDAQ100指数に連動するインデックスファンドよりも、優秀な成績を残しているアクティブファンドは、探せばいくらでも見つかります。
ただ、これは「生存バイアス」と言わざるを得ない側面があり、今現在はインデックスファンドよりも優秀な成績であっても、相場の変動でインデックスファンド以下になるケースが大半です。
「アクティブファンドとインデックスファンドのどちらが良いのか?」は価値観の問題となってきますが、一般的な投資アドバイスとしては、インデックスファンドをおすすめします。
一括投資のリスク管理と対策
一括投資で避けるべきタイミングと市場環境とは?
「一括投資で避けるタイミングや市場環境はありますか?」とは、誰もが思うことですが、相場の未来は誰にも分からない以上、分からないということが答えになります。
S&P500指数で見ても、2008年9〜11月のリーマンショックも、2020年2〜3月のコロナショックも、それ以前の段階からは誰にも予測できませんでした。
ただ、事実としては、一括投資であろうと積立投資であろうと、淡々と投資を継続していたら市場は回復し、20年間で3倍近い上昇になっていたということです。
つまり、過去からの教訓としては、「長期・積立・分散投資を継続しなさい」ということになります。
ITバブル崩壊やリーマンショック、コロナショックなどの暴落は、これからも間違いなく起こります。
直近でも、2024年7〜8月のAIバブル崩壊ショック、2025年4月のトランプ関税ショックなど、小さい暴落は起こっています。
しかし長期で見ると、世界経済は成長を取り戻し、株価は上昇し、暴落局面でも投資を継続してきた投資家が勝利してきたということは、誰にも否定できない事実です。
一括投資成功のための実践ポイント
一括投資とほったらかし運用の最適な組み合わせ方
一括投資でほったらかし運用したい場合には、インデックスファンド型の投資信託を選択するようにしてください。
世界経済の成長によって産業構造は変化するため、個別株は、ほったらかし運用との相性が非常に悪いです。
一方、インデックスファンドのような投資信託の場合には、S&P500指数やNASDAQ100指数、オルカンのような時価総額加重平均型は、時価総額で銘柄割合が調整されます。
現在は、マグニフィセント7(Microsoft、Apple、Google、Amazon、Meta、NVIDIA、Tesla)の割合が大きいですが、この20年間で時価総額が大きくなって調整された結果です。
まとめ
一括投資と積立投資の違いに迷う方は少なくありませんが、新NISAで年60万円投資する場合には、1月に60万円投資するか、毎月5万円ずつ投資するかの違いであって、ほとんど変わりません(一括投資の方がやや有利にはなっています)。
「一括投資か積立投資か?」よりも重要なのは、「新NISAを使って投資すること」「暴落局面が来ても投資を継続すること」の2点です。
一括投資でほったらかし運用をする場合には、S&P500指数やオルカンのように、時価総額加重平均型のインデックスファンドがおすすめです。
Q&A
Q1 一括投資でほったらかし運用をするならおすすめは?
A1 産業構造の変化にも対応できるインデックスファンドがおすすめです。具体的には、S&P500指数やオルカン(世界株投信)などがあります。
Q2 一括投資と積立投資の違いとは?
A2 年60万円投資する場合には、1月年初に60万円投資するか、毎月5万円ずつ投資するかの違いとなります。一括投資でも年分散ができているため、長期・積立・分散投資になります。
Q3 どのタイミングでS&P500指数に一括投資すべき?
A3 相場の未来は誰にも分かりません。過去の教訓から言えることは、リーマンショックのような暴落があっても、投資を継続すべきということです。